青少年事情と教育を考える 59
都教委の「性教育の手引」、指導要領超える内容も

ナビゲーター:中田 孝誠

 先月、この欄で書きましたが、東京都教育委員会が改訂を進めていた「性教育の手引」が先月下旬に公表されました。
 これが小中学校、高校、特別支援学校の授業の指針になるわけです。今回は15年ぶりの改訂です。

 大きな特徴は、中学校で学習指導要領の範囲を超える内容(例えば、避妊、妊娠中絶など)を扱う場合は指導案を事前に保護者全員に説明し、理解を得ることを原則としていることです。
 保護者に説明するための文例も載せています。また新たに性同一性障害やインターネットによる性被害への対応などにも触れています。
 全体的に見ると、心身の発達と健康、異性の尊重や命の連続性など、子供の発達に配慮した書き方がされていると言えると思います。

▲都庁

 今回の改訂が注目されたのは、昨年3月、足立区の公立中学校で学習指導要領にない性交や避妊などを教えた授業が問題になったからです。特に生徒に具体的な性行為の是非についてアンケートに答えさせたり、授業中にもクラスメートや参観に来ている人たちの前で答えさせるなど、中学生の発達段階から見て重大な問題がありました。

 この授業を主導したのは「人間と性」教育研究協議会でした。
 今回の改訂について、同会の代表幹事は「国際基準には程遠いが、積極的に性教育を行ってもバッシングされないとの安心感は広がるのでは」と語っています(東京新聞3月29日付)。
 つまり、足立区で行われたような学習指導要領を超えた授業が今後広がる可能性もあるということでしょう。そして、そのような授業を行ったとしても、問題にしにくいとも言えます。

 現場の教師、保護者の意識が問われます。児童・生徒の人格の完成を目指す人間教育の一環として、発達段階を踏まえ、性道徳を重視した授業が行われるべきだと思います。