青少年事情と教育を考える 58
「品格教育」の実践に注目

ナビゲーター:中田 孝誠

 前回、岡山県総社市の「誰もが行きたくなる学校づくり」事業を紹介しました。
 この事業はもともと不登校対策として始まり、平成22年度から行われている事業では、「スクールカウンセラーなどを含めたチームによる対応」「ピアサポート(児童生徒が互いに支え合う)」「SEL(社会性・対人関係のスキル、情動の学習)」、そして「品格教育」が行われてきました。

 このうち、品格教育(「人格教育」とも呼ばれています)は、「挨拶」や「思いやり」など品格に関わる行為を月ごとのテーマとして設け、子供たちに良い行動とは何かを伝えます。そして子供自身が目標行動を考え、繰り返し実践することで、良い習慣を定着させながら、規範意識を向上させるというものです。

 ところで、学校現場では小学校と中学校で道徳が教科化され(「特別の教科 道徳」)、昨年は小学校、今月からは中学校でも授業が始まります。

 総社市教委がまとめた『だれもが行きたくなる学校づくり入門』によると、新しい道徳の学習指導要領には「自己の生き方を考え、主体的な判断の下に行動し、自立した人間として他者と共によりよく生きるための基盤となる道徳性を養うことを目標とする」とあります。
 また、道徳性を養うため、「道徳的諸価値についての理解を基に、…道徳的な判断力、心情、実践意欲と態度を育てる」とあります。つまり、道徳的な価値をもとに道徳性を養い、それを行動に結び付けることができるようにすることを目標にしています。

 一方、品格教育は「言葉によって徳に気付かせるとともにその行動化を促進し、行動と振り返りの積み重ねによってよりよい習慣を身に付けさせる」ことです。そのために「挨拶」や「思いやり」などの具体的なテーマを設け、学校だけでなく家庭や地域と協力・連携して行うわけです。

 このように品格教育は「特別の教科 道徳」と通じる部分が多く、子供たちが道徳的価値を学びながら家庭や地域で道徳的実践をするという意味でも、重要な教育活動だと言えます。