夫婦愛を育む 57
「きれいごとを通したい」

ナビゲーター:橘 幸世

 再び朝ドラ「まんぷく」を取り上げたく思います。

 ヒロインの見事な良妻賢母ぶりに再度感銘を受けました。それは3月1日放送「きれいごとは通りませんか」というタイトルのワンシーンでした。

 妻が夫の真価を理解して、「あなたは発明家ですから」とその道を後押しするまでは、先に触れました。

 即席ラーメンで特許を取得し、「これで独り勝ちだ」とライバル社に抜きん出るのを喜ぶ夫に、妻は「それでいいんですか?」と問い掛けます。
 簡単に作れて栄養のある安価な食品を人々に届ける、という原点からズレかけている夫を、軌道修正するのです。

 統一原理では、聖書の創世記に記されている「善悪を知る木」は人類最初の女性を表している、と説いていますが、彼女はまさにその役目を果たしています。
 成功や目標達成に猛進する男性は、時にそれ以外の点が見えなくなったり軽んじてしまうことがあります(そのエネルギーこそが成功をもたらすのですが)。その見落としがちな点をちゃんと拾い上げて気付かせるのが、良き支え手です。

 妻の助言に、即席ラーメン開発の原点を思い出した夫は、このままでは体に悪い類似品が出回ってしまうことを危惧し、特許の公開を決断します。その夫の姿勢も見事です。

 けれど、常識では考えられないお人好し的方針は、現実の壁にぶつかります。同業者は彼の提案に乗ってこず、友人は「世の中、そんなきれいごとが通るわけない」と言います。

 そこで諦めないのがヒロインのすごいところ。その友人に助力を懇願するのです。夫に「きれいごとを、正しいと思うことを貫かせてやりたい」、掲げた理想にのっとって仕事をさせてあげたい、そのために道を開いてやってほしい、と。

 夫の相対圏に立って支えるだけではなく、夫が本来の道からそれそうになったら正し、現実の壁にぶつかれば、それを越える道を模索する。何より、夫の持つ良さ、本性を大切にし、守り、生かしていこうとする姿に、感銘を受けました。
 夫への揺るぎない信頼があればこそ、できたのだと思います。
 
 相手のことを相手以上に理解して支える。支え手として最上級の世界といえるでしょう。
 理想を掲げる私たちも、現実で妥協したり、これまでの習慣や個人の判断に流されたり(時には感情で判断して)してしまうことがあります。でも、次の世代にこの理想を引き継いでもらおうと願う時、極力理想に沿った生き方を、地道に愚直に積み重ねていかなければならないのではないでしょうか。