2019.02.01 17:00
青少年事情と教育を考える 49
虐待予防には家族支援を
ナビゲーター:中田 孝誠
千葉県野田市で、小学4年生の女児(10)が、父親(41)の虐待で死亡するという事件がありました。
女児は学校のアンケートで父親の虐待を訴え、児童相談所も一時保護するなど、周囲は事態に気付いていたにもかかわらず、救うことができませんでした。
また、一家が以前住んでいた沖縄県糸満市でも、親族が市に何度か相談し、市も家庭訪問しようとしましたが、父親が受け入れず、訪問できませんでした。転居先の野田市に情報が十分に伝わっていなかったともいわれています。
昨年、東京・目黒区で5歳の女の子が両親から虐待を受けて死亡した時、一家が以前住んでいた香川県の児童相談所は虐待を疑って女の子を一時保護しながら、その後の対応が不十分で、父親(義父)への指導も行われませんでした。
一家が東京に転居した際も東京の児相への引き継ぎがうまくできず、東京の児相は緊急性を認識できていなかったと指摘されています。
今回も、同じような事態が起きてしまったわけです。
虐待によって亡くなった子は、この10年間は1年に30人から50人前後です(心中を除く。心中を含めると50人〜100人)。約1週間に1人の子が亡くなっていることになります。
昨年7月に政府が発表した児童虐待防止の緊急対策では、児相間や自治体間の情報共有と家庭への立ち入り調査のルール化、そして児相の児童福祉司を増やす計画が打ち出されました。
周囲が気付いていても事件を防ぎきれないということは、構造的な課題があるということですから、その対策を進めるのは当然です。
一方で、虐待を防ぐスタートは「困っている家族への支援」だという専門家の指摘もあります(国立成育医療研究センター・奥山真紀子氏。東京新聞2018年12月29日付け)。家族の問題を見極め、その原因への対応が必要だというわけです。
現在、文部科学省と厚生労働省は、保健師やソーシャルワーカーなどが家庭を訪問して子育て相談などを受ける訪問型家庭支援事業を行っています。
そうした事業を充実させることや、一部の自治体が制定している家庭教育支援条例など、家庭への支援が求められています。