世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

日ロ平和条約交渉の意味

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 1月22日から27日を振り返ります。

 この間、国内外では次のような出来事がありました。
 日ロ首脳会談(モスクワ)(22日)。日韓外相会談(スイス・ダボス)(23日)。沖縄県民投票、全域実施へ。「三択案」与野党合意(24日)。韓国、最高裁前長官逮捕される(24日)。米、政府機関閉鎖の一時解除(25日)などです。

 今回は、日ロ首脳会談について説明します。
 昨年11月14日の首脳会談で、日ソ共同宣言(1956年)を基礎に平和条約交渉を加速させることで合意、12月1日の首脳会談で、両国の外務大臣が交渉責任者となることが決まったのです。

 安倍首相は昨年12月12日、一年間を表す漢字を「転」としました。背景には日ロ関係の大きな転機が訪れてきたことがあるといいます。

 今年1月14日、両国外相会談がモスクワで開かれ、同22日、同じくモスクワで日ロの首脳が会談したのです。河野太郎、ラブロフ外相らの同席を含めて約3時間。通訳だけを入れた1対1の会談は50分間に及びました。プーチン氏は自分の椅子の向きを変え、安倍氏に真正面から向き合って話したといいます。

 会談後クレムリンで行われた両首脳の共同記者発表では「進展」と言える具体的内容はありませんでした。
 プーチン氏は、経済協力の話題に多くの時間を割き、エネルギー分野、インフラ分野にも具体的に言及しましたが、平和条約については限定的でした。「相互に受け入れ可能な解決のための条件を作る注意深い作業が、今後控えている」と述べるにとどめています。

 安倍氏は、「戦後70年以上残された課題の解決は容易ではない。相互に受け入れ可能な解決策を見いだすための共同作業を、私とプーチン大統領のリーダーシップの下で力強く進めていく」と語り、具体的な言及はありませんでした。

 日ソ共同宣言は、平和条約締結後にソ連が歯舞群島と色丹島を日本に譲渡するという前提で、改めて平和条約の交渉を実施するという合意。議会の承認を経た正式な「条約」です。

 今、両国の主張には大きな隔たりがあります。
 日本は「不法占拠された北方四島の返還」を主張。ロシアは今、「第二次世界大戦の結果、北方領土がロシア領になった」(2005年9月)と主張しています。
 1993年の東京宣言、2001年のイルクーツク宣言、2002年のイワノフ外相発言では四島の帰属問題は未解決との立場でしたが、それを変えたのです。

 今が交渉妥結の時であると、安倍氏は考えています。
 国際的に孤立し、アジア太平洋地域の経済発展の波に乗れないロシアは、日本が頼りなのです。日本としては、対中国戦略、対北朝鮮戦略としてロシアとの連携は重要です。今年6月のG20首脳会議と併せて首脳会談を行い、大枠合意に進もうとしているのです。