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制作の舞台裏から 101
拉致・監禁からの解放の先にあるもの

 今年(2025年)210日、拉致・監禁、強制棄教の被害者である後藤徹さんが、その被害体験をつづった自伝を出版した。

 2月10日に行われた出版記念式の後、後藤さんが実際に監禁されていた荻窪のマンションから、解放後に向かった渋谷の家庭連合(旧統一教会)本部までの道のりをもう一度たどるというので、筆者も同行し、その様子を撮影することになった。

 今回は、その時のことを記そうと思う。

 後藤徹さんといえば、家庭連合に反対する親族や活動家によって拉致され、125カ月もの間、監禁されていた被害者だ。

 その被害は最高裁で事実として認定され、親族と反対活動家に対して勝訴したことをご存じの人も多いだろう。

 最近では、最高裁で認定されたこの監禁の事実を、「ただのひきこもり」として揶揄(やゆ)した反対活動家に対して起こした名誉毀損(きそん)裁判で注目が集まっている。

 後藤徹さんの125カ月にわたる監禁からの解放は突然だった。
 2008年210日の夕方、監禁されていたマンションの玄関から突如、無一文で放り出されたのだ。

 一年で最も寒い時期に、スウェット部屋着)に革靴(拉致された当時の物)を履き、家にあったハサミで散髪された姿はまるで浮浪者のようだったと後藤さんは語った。

 後藤さんは、荻窪に監禁されていたが一度も外出を許されたことがなかったため、全く土地勘がなかった。

 12年5カ月という歳月により、知人もいなくなり、また本来は最も信頼できるはずの親族に拉致・監禁されたことで、誰を信じて良いのか分からなくなっていた。

 そこで後藤さんは、家庭連合本部(渋谷区)に行けば助けてもらえるだろうと考え、渋谷を目指して歩き始めた。
 約10kmの道のりだ。もちろん当時の後藤さんはその距離を知らない。

 歩き始めて間もなく、交番があった。監禁されていた事情を話したら助けてもらえるかもしれない。しかし立ち寄った交番の警察官は、後藤さんの話を信じることはなく、メモ用紙に渋谷までの道のりをペンで書いてくれただけだった。

 解放直後、身長182cmの後藤さんの体重は、約50kg。部屋の中に監禁されていたため体は痩せ細り、体力はほとんどなくなっていた。

 家族から食事制裁を受けていた後藤さんは空腹だった。道中の飲食店から漂うおいしそうな匂いに嗅覚と胃が刺激されるが、一銭もなかった。自販機の近くで落ちている小銭を探したが、見つからない。

 日が沈み、体を刺すような2月の寒さが後藤さんを襲ってきた。防寒着もなかった。

 だが後藤さんは、どんなに空腹でも、どんなに寒くても、「自由になって自分の意志で歩けるのがうれしい」と語る。

 後藤さんは、二度の監禁被害に遭っている。
 一度目は、脱会を偽装し運良く逃げることができたが、脱出後も、また拉致・監禁されるのでないかと、常に恐怖を感じていたそうだ。拉致・監禁の被害者は、皆そうなのだという。

 脱出後、家族と関係を修復したと思っていても、再び被害に遭うことが少なくない。
 道を歩いていてもバン(中型の車)が停車していると、そこから人が出てきて拉致されるのではないかという恐怖心に襲われるそうだ。

 事実、後藤さんも、家族から「もう監禁しない」と約束されていたにもかかわらず、二度目の被害に遭い、結局125カ月も監禁されるに至った。

 しかし今回は、「監禁しても意味がない」と家族が諦めた結果の解放だった。
 もう二度と監禁されることはないという確信が、後藤さんに希望と自由を与えた。

 新宿付近に来た時、後藤さんの膝が急激に痛み出した。道に落ちていた角材をつえ代わりに歩き続けた。

 日頃、運動不足の筆者も、同じような地点で股関節が痛み始めた。毎日、通勤する程度は歩いているのにそれでも痛むということは、125カ月も監禁されていた後藤さんはもっとつらかったのではないか。

 「歩道橋が魔物に見えた」

 渋谷まであと少しの所、富ヶ谷の交差点に歩道橋がある。普通の階段だが、極限状態の後藤さんの目には越えられない壁のようにも思えた。

 本部まであとわずかという所に来たが、後藤さんはついに歩けなくなった。膝の痛みと体力の消耗により限界が来たのだ。
 しかし神は後藤さんを見捨てることはなかった。

 奇跡が起こったのだ。

 詳しいことは後藤徹さんの自伝『死闘 監禁4536日からの生還』を読んで確かめてほしい。125カ月、神が後藤さんと共に歩んだ証しを知ることになるだろう。

 この日、荻窪から渋谷まで歩いた様子は、出版記念会と併せて、「U-ONEニュース2025214日号」で報じている。

 誰よりも自由が奪われる苦しみを経験し、「自由の尊さ」を知る後藤徹さんの姿をぜひ見ていただきたい。

(N)


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【U-ONEニュース2025年2月14日号】

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