2024.12.27 17:00
【B-Life『世界家庭』コーナー】
ハロハロ フィリピン便り⑧
その国の食を愛するということは……
2010年から2011年まで『トゥデイズ・ワールド ジャパン』に掲載された懐かしのエッセー「ハロハロ フィリピン便り」を、特別にBlessed Lifeでお届けします!
筆者のトゥパス サチコさんは、3億6千万双のフィリピン・日本家庭です。
※ハロハロとは、タガログ語で「混ぜこぜ」を意味する言葉。フィリピンの代表的なかき氷デザートを指す。
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私は、フィリピンに入国するたびに、必ず1週間後に受ける小さな洗礼があります。それは何らかの食べ物、または水が合わないのか唇が腫れ、かゆみが出るのです。数日経つと自然に治りますが、なぜなのか分かりません。
ただ、この国を愛さなければならないという思いは湧いてきます。
そこでフィリピンを愛する一歩として、まず、食を愛そうと思い、市場に出掛けては、さまざまな野菜を買ってきて、主人に作り方を教わりました。
この国の野菜は栄養価が高く、中には、「母の親友」「奇跡の木」「命の木」と呼ばれるマルンガイ(フィリピン名)という野菜があります。そのような野菜を使った料理は、日本の野菜炒めの味などに似ていて、とても食べやすいものもあります。
他に、チョコレート味のご飯(デザート)など、初めて口にする料理がたくさんあります。
中でも、冷や汗をかいたのは「バロット」というアヒルの孵化する寸前のゆで卵でした。フィリピン人は、これが大好物です。「食を愛する」と決意していた私が、「バロット」を勧められて引き下がることはできません。
「せめて一口……!」
食べ方を教わり卵の殻をむき汁をすすります。そのとき、アヒルの赤ちゃんの羽が微妙に唇にあたり、〝ぞっ〟としました。〝何を食べているのか分からずに食べるのであれば幸いだなぁー〟と思いながら頭らしきところを一口パクリ。
味の感想は―。塩味が利いていて、まずくはありませんが、未知との遭遇でした。
考えてみれば、フィリピン人にとって、納豆、わさび、刺身などをおいしそうに食べている日本人の姿は異様に見えるのです。
お互いの国の食の違いを味わいながら、フィリピン人をもっと理解していきたいと思いました。次なる珍味との出会いが楽しみです。
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(この記事は、『トゥデイズ・ワールド ジャパン』2011年4月号に掲載されたものです)