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青少年事情と教育を考える 279
児童虐待、6割は「心理的虐待」

ナビゲーター:中田 孝誠

 今回は、児童虐待の現状について取り上げます。

 2022年度(令和4年度)に児童相談所が対応した児童虐待の相談対応件数は21万4843件でした。

 自治体によって虐待対応の解釈が違うと指摘され、再度集計が行われましたが、前年度より7000件余り増加しており、依然として増加傾向にあることは変わりません。

 相談の内訳を見ると、「心理的虐待」が全体の6割(59.6%)を占め、次いで「身体的虐待」が23%、「保護の怠慢・拒否(ネグレクト)」が16.2%です(厚生労働省『令和4年度福祉行政報告例(児童福祉関係の一部)の概況』)。

 もう一つ、こども家庭庁の専門委員会がまとめた『こども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第20次報告)』(2022年度4月から23年度3月までの1年間に発生した児童虐待による死亡事例、または身体的虐待やネグレクトにより死亡の危険があった事例を分析)によると、心中以外の虐待死は56人、心中による虐待死(未遂を含む)は16人でした。

 このうち心中以外の虐待死では、0歳児が25人で半数近くを占めています。さらに15人は0カ月でした。

 また、養育者(母親)の心理的・精神的問題としては、15人が「養育能力の低さ」(子供の成長発達を促すために必要な授乳や食事、情緒的な要求への応答などが適切にできない)、11人が「育児不安」に該当するとしています。

 こうした死亡事例の調査を踏まえて、専門委員会が挙げた課題の一つが、「DV構造とこどもへの影響についての理解の促進」です。
 虐待相談の6割を占める「心理的虐待」の意味は、DVつまり父母間の暴力行為を目撃したり(面前DV)、暴力を受けている親の養育力の低下などが子供の成長に重大な影響を及ぼしているという意味です。

 DVが繰り返される家庭では、子供が自分の意思を表現できないことから、「『こどもの話を聴く』ことを意識した対応の強化」、あるいは父親が孤立して無理心中に及んだ事例から「父親へのサポートの充実」なども提言しています。

 ちなみに、以前も紹介したことがありますが、児童の権利条約には次のように書かれています。

 「家族が、社会の基礎的な集団として、並びに家族のすべての構成員、特に、児童の成長及び福祉のための自然な環境として、社会においてその責任を十分に引き受けることができるよう必要な保護及び援助を与えられるべきであることを確信し、児童が、その人格の完全なかつ調和のとれた発達のため、家庭環境の下で幸福、愛情及び理解のある雰囲気の中で成長すべきであることを認め」(前文)

 面前DVの事例から見れば、父母(夫婦)関係を立て直すための支援、あるいは結婚と家庭の意義を教えるような取り組みこそ、最も重要な児童虐待防止策だといえそうです。