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愛の知恵袋 190
「ミニ同窓会」と「マイ同好会」

(APTF『真の家庭』311号[20249月]より)

松本 雄司(家庭問題トータルカウンセラー)

盆と正月に見る日本の良き伝統文化

 毎年、夏になると、日本では大移動のような現象が起こります。

 学生たちは夏休みなので、各地に遊びに行ったり、実家に帰省したりします。特に、お盆の連休になると全国で戦没者の慰霊や追悼行事が行われ、町ではさまざまな夏祭りが催されるところが多いのではないでしょうか。家々では先祖供養と墓参りをし、家族団欒の場が持たれるのです。

 普段は遠くにいる家族や親族が一斉に故郷を目指すので、帰省ラッシュが発生します。

 我が国では江戸時代の頃から、民族的慣習として“盆と正月”の二大行事が定着してきました。当時は今のように日曜とか祝祭日という休日がなかったので、武家や商家に奉公人として働きに出ていた庶民にとっての一番の楽しみは“盆と正月”の休暇で故郷の実家に帰ることでした。

 日本では戦後から新暦で行うようになりましたが、韓国や中国、ベトナムの正月は今でも旧暦でお祝いされていて、その時期になると民族大移動が起きるようです。

同窓会もいいもんだ!

 さて、これも日本の文化になりますが、この時期によく開催されるのが“同窓会”でしょう。私も727日に、故郷の国東市のホテルで同窓会があって参加しました。中学校の学年同窓会です。還暦、古希と節目ごとに行い、今回は喜寿の記念の同窓会でした。

 昭和22年、全国で267万人も生まれた団塊世代第一陣なので、田舎の中学校でしたが1組から7組まであって、しかも、各組には生徒が50名以上もいました。

 今回の同窓会に集まったのは学年全体で61名。私の組からは9名が参加していましたが、中学3年の時のクラス名簿で席を決めてくれたので、懐かしい面々とすぐに打ち解けて話が弾みました。

 9名のうち大分県内からは4名で、あとは大阪から3名、京都から1名、なんと札幌からも1名が来ていました。「遠くから、よく来てくれたね!」と言うと、「これが最後かもしれないと思ってね…」と皆口を揃えました。

 物故者への黙祷、歓迎の詩の朗読、写真でたどる部活や修学旅行の思い出、乾杯、会食、立ち回り自由の懇親会、そして、最後に大声で校歌を斉唱して万歳三唱。

 二次会は、希望者だけで宴会室でカラオケ懇親会。皆、歌より話に夢中でした。

 地元の有志たちがこの会を準備してくれましたが、大いに盛り上がり、思い出話に花が咲きます。そして、皆、「元気でな!」「長生きしてね!」「また会おうよ!」と口々に名残を惜しみながら会場を後にしていました。

 帰り道、私は夜の道を車で走りながら、ずっと熱い感動のようなものに胸が包まれていました。温かい友情に満たされて、久々に心の底からうれしい気分になれました。

「ミニ同窓会」と「マイ同好会」のすすめ

 実は、同じ7月の21日に、私はもう一つの“同窓会”をしました。大学時代のサークル仲間で福岡県に住む友人が、「今度、夫婦で大分に行くから、その時に“同窓会”をしませんか!」と声をかけてくれたので、「ああ、いいね!」と快諾しました。大分市にいる同じサークルの後輩にも声をかけて、4人で「ミニ同窓会」をしました。食事をしながらの歓談でしたが、あっという間に3時間が経ってしまいました。

 若いころ、同じ夢や使命感をもって、苦労や感動を共にした友人たちは貴重な存在です。永遠に残る思い出であり、心の友なのです。

 ところで、高齢期になると女性の方が活発で、いつも友だちと「今日はうちで」「来週はあそこで」と“女子会”に余念がありません。長生きの秘密かもしれませんね。

 一方、男性たちは面倒くさがり屋も多く、出不精になりやすいので要注意です。

 また、この心配は若い人たちにもあります。ネット上でのコミュニケーションが増えていますが、それだけでは得られない大切なものが、生の人間交流にはある気がするからです。

 そこで提案ですが、学校でも、仕事でも、趣味でも、ボランティア活動でもなんでもよいのですが、「ある時期に何かを一緒にしたことのある仲間」がいれば、声をかけて会う場をつくってみましょう。それが楽しい「ミニ同窓会」になります。

 あるいは、同窓会ではなくても、何かに関心のある者同士が集まって話をする「マイ同好会」をしても良いと思います。人数は2人でも3人でも構いません。

 人は対面の語らいを持つことで、もっと心情関係を深めることができます。今後の人生を助け合っていける親友になれるかもしれないし、また、そこから思わぬ展開が起こって、新しい何かが生まれるかもしれません。

 私たちは、一度しかない人生の貴重な日々を、「ただ働いて、食べて、テレビを見て、死んでいく…」というのでは、あまりにもむなしい限りです。

 積極的に人と会い、心の交流を持ち、信じ合い、助け合い、愛し合うというような行動なくしては、人間としての魂の成長や成熟はできないのではないでしょうか。

 そういう意味でも、「ミニ同窓会」や「マイ同好会」を積極的にもって、貴重な人生の時間を価値あるものにしていきたいものです。

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