2024.08.31 17:00
心をのばす子育て 54
アプリで読む光言社書籍シリーズとして「心をのばす子育て」を毎週土曜日配信(予定)でお届けします。
子育ての本質を理解し、個性に合わせた教育で幸せな家庭を築くための教材としてぜひお読みください。
長瀬雅・著
6、意の教育
■性教育
子供が中学生のころになると、心配になるのが「性の問題」です。ところがこの性の問題を語る思想が日本にはほとんどありません。この問題を考えるには、やはりアメリカを参考にするのが最も分かりやすいと思います。
アメリカには現在さまざまな問題が山積みされています。現代のアメリカの混乱は「家庭の崩壊」にあり、この家庭崩壊の大きな原因は「性の乱れ」にあります。
国家的な取り組みもさることながら、子供たちへの「性教育」を積極的に進めながら「家庭再建」を目指しています。
問題はその性教育の方法ですが、今アメリカには二つの方法があります。「非指示的アプローチ」と「自己抑制アプローチ」です。
「非指示的アプローチ」とは、性の情報はセックスを含めてすべて与えて、その結果、どうするかは子供の判断に任せるというものです。性関係をもつのも子供の判断に任せます。ただ、子供が生まれたら困るので避妊教育(コンドーム)をします。ですから別名「セーフ・セックス」と言います。
この方法は80年代に、子供の妊娠が問題化し、エイズが社会問題になったころに積極的に進められました。当時、高校でコンドームを配ったことが日本のマスコミでも話題になりました。
しかし1992年ごろからコンドーム教育は失敗したことが明らかになってきました。高校生の妊娠が増えたのです。
そこで、今のアメリカは「自己抑制アプローチ」という「性のルール」を確立しようという方向に向かっています。これが実に大きな成果を上げました。その結果、96年に「福祉改正法」で「自己抑制プログラム」を採用する州には、年間5千万ドル(60億円)を5年間にわたって補助することを決定し、現在50州すべてが受け入れました。
この「自己抑制プログラム」は、性を大切にしよう、結婚まで性的関係は待とうという思想です。「セーフ・セックス」に対し「セーブ・セックス」と言われます。
これは一見、日本の純潔教育に似ています。過去の日本の純潔教育は女性にしか要求されなかったり、結婚に失敗した人を差別するなどの欠点がありました。
アメリカの「自己抑制プログラム」は新しい時代の「純潔教育」と呼ぶべきものかもしれません。紙面の関係で詳しい内容は語れませんが、思春期に性を体験することが子供の心にどのくらい影響を与えるかについて、興味深いデーターがあります。
自殺を試みる危険 6倍
家出をする危険 18倍
マリファナを使用する危険 10倍
学校を停学する危険 5倍に増加する。
1991年『小児科』誌(アメリカ)
性の問題は子供の精神に大きな影響を与えるのに、日本という国は性に関しては非常にルーズな国です。また、日本には「子供の性を守る」という思想がほとんどありません。
それに対し、アメリカは非常に厳しい国です。例えば、テレビでタバコのCMや酒を飲むCMは許されません。酒のCMはできますが、飲んでいる場面は許されないのです。
週刊誌や新聞には女性の裸の写真はありません。水着の写真すら許されないのです。よく海外旅行に行って日本の週刊誌が検閲に引っかかったりしています。また、バイオレンスチップといって、暴力的なものとか性描写の過激なものは、テレビやパソコンでは放映できないようになっています。
それくらいアメリカは子供を守るということに関しては厳しいのです。それでもいったん崩れると修復に多大な時間と労力がかかるのです。
ところが日本にはもともと、子供を「性の暴力から守る」という思想がほとんどないので、悪くなり始めると日本はとことん悪くなっていきます。アメリカは限界線まで行って返ってきています。日本は限界線に向かって突き進んでいます。
この性の乱れから子供を守るということは親にしかできません。ここでも家庭の果たす役割が非常に大きいのです。
良い家庭をつくるには、家系を総体的に見て「自分の家庭」を知ることが必要です。家庭がもっている背景はそれぞれの家庭で違うので、「良い家庭にする方法」もすべて違います。
すべては過去からの流れの中に現在があります。過去を知ることにより原因が分かり、解決の道が見えてきます。そして現在が変われば未来が変わってきます。
問題のすべては家庭にあります。すべての幸せも家庭から始まります。家庭が変わればすべてが変わってきます。子育ても家庭も原理原則を押さえながら、個性に応じた子育てと家庭をつくり上げていきましょう。
---
「心をのばす子育て」は、今回が最終回です。ご愛読ありがとうございました。