家庭力アップ講座 15
共感的聞き方(後編)

(APTF『真の家庭』226号[8月]より)

家庭教育アドバイザー 多田 聡夫

聞き方の練習
6月号から続く)

 ここで「共感的な聞き方」の練習を紹介します。

1.二人ペアを組みます。そして聞き手と話し手に分かれます。

2.聞き手は、話し手が、何を言おうとしているのか、どんな気持ちなのかを理解したいという気持ちで共感しながら話を聞きます。質問や意見は言わないで、ただしっかりと聞くようにします。うなずいて聴くようにしてください。

3.4分たったら交代して、同じように演習をしてみてください。

4.演習が終わったら、「共感的聞き方」をしてみてどうだったのか、また、「共感的聞き方」をしている人に話してみてどうだったのかお互いに、感想や意見を聞いてみましょう。

 黙って聞いてあげるというのは、素晴らしい愛情です。子供に対しても、黙って聞いてあげることが大切なのです。親にとって、言いたくなってしまう自分との戦いでもあります。どんな相談にでも乗ってあげられる親になっていくことが大事なのです。「心が育つ」ということは、聞いて、共感してあげることです。1回の練習ですぐにできるようになるものではありませんが、何度も何度も繰り返して練習をしてみましょう。だんだん子供の気持ちが理解できるようになるはずです。

□親の感想を紹介します。

 「共感という世界、愛が相手の心に届いて種が芽を出し、花が咲き、実りをえるように、今までの人に対する間違った目線を変えたいと思いました」

 「今日は、子供に対して本当に今まで申し訳ない接し方をしてきたな…と反省ばかりでした。共感することの大切さ、子供の人格を認めること、何よりも親自身が変わることが、真の愛の伝統を相続していくことなのだと感じました。学んだことを家庭で実践できるように努力していきます」

 「人の話を最後までしっかりと聞く事が全くなく、途中で遮ったり、きつい言葉で返していた事をとても恥ずかしく思いました。相手の気持ちを分かってあげる事もなく自分勝手でした。心から愛情を持って、接していくように努力します。とても素晴らしいお話でした」

「絶対愛は相対を絶対視」すること

 教えるよりも「育つ」環境を作ること。そのためには聞いてあげること。「不登校、学校に行けないのは苦しいよな。辛いよな」と共感的に理解してあげるのです。共感的に理解してあげると、子供は喜び、親の愛情を感じ、心が正常になっていきます。子供は、お父さん、お母さんに心配をかけていることに気づき、学校に行こうと思うようになるのです。

 少々、難しい表現ですが、「絶対愛は、相対を絶対視する所で成立する」と言えるのです。

 つまり、子供を心から信頼して尊敬して、子供の気持ちに共感していくことなのです。

□親の感想を紹介します。

 「今日の講義を通して、反省することばかりでした。子供の一番大切な時期に子供の話を聞くこともせずに、子供が一番言いたい事さえ切ってしまっていたことを悔い改めさせられています。今は、なるべく話すこと以上に聞くことに意識を持てるようになりました。ありがとうございます。少しずつですが、 自分が良き妻として、母として努力していきたいと決意させられました」

 「今まで妻として、母として、省みた時、夫とは向き合って話をしてきたけれども、子供と向き合っていたかと考えました。十分に話を聞いたりしていなかった事に気がつきました。自分の意見を言う事ばかりでした。家族に申し訳なかったです。共感的な聞き方、積極的な聞き方を意識して努力して実践していきたいと思います」

 「私達は、ある意味、頭でっかちで、人に教えたり説得や説明することの方が多く、誰かにじっくり自分の心を話したり相談することが少なかったと思いました。相手を信頼して黙って聞いたり、また話したりすることの重要性を感じます。特に、子供の心を育てるには、親による共感的、積極的聞き方の大切さを例題を通して明確にわかりました。小、中、高の子供を持つ家庭に、もちろん私達にもこのような、細やかな具体的な教育が成されることは希望です」

 「本当に全てにおいて感動しました。うちの家庭は、長男が中3の時、登校拒否になり、1年半夫婦で何度も話し合い、一時は心情的には地獄のようでした。そんな時、「子供に届く愛」というテーマの説明をコピーして何度も読みました。正にその状況を受け止めるところから始まり、夫婦間も見直さざるを得ない、本当に原点に還りました。自分たちがつらい涙を流した後、私なりの役割や使命を感じ悟りました。

 子供を信じることがどれほど大変かも通過しました。今は、まだまだ子供も成長途上ですが、この子供が、SOSを出してくれたことに感謝しております。あの時、無理に学校へ行かせていたら、今の息子の明るさはなかったと感じています。私たち夫婦の再出発の為にあったことだと思います」