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続・夫婦愛を育む 19
逃げ道を残しておく

ナビゲーター:橘 幸世

 Blessed Lifeの人気エッセイスト、橘幸世さんによるエッセー「続・夫婦愛を育む」をお届けします

 6月30日放送のNHK大河ドラマ『光る君へ』で、私が女性向け講座でお話ししている大切なポイントが語られていました。

 主人公のまひろが夫の浮気を知り、腹を立てます。
 責める彼女に、親子ほど年の離れた夫は、素直に頭を下げて詫(わ)びます(当時、それがどのくらいレアなことだったかは分かりません)。

 とはいえ、女性としてはそう簡単にあっさりと許せるものでもないでしょう。なんとか機嫌を取ろうとする夫に、なお言い返すまひろです。

 さすがにカチンときたのか、「お前のそういうかわいげのないところ…」と、夫はまひろの痛いところをついて反撃します。
 それに対して彼女は、火鉢の灰を夫に投げつけます。
 それ以来、夫の足は遠のいてしまいます(当時は夫が妻の元へ通うスタイルでした)。

 そんな状況下、まひろの弟の乳母、いとが彼女に語りかけます。

 「殿様(まひろの夫)にお詫びの文ふみを出したらいかがでしょう?」

 「悪いのはあちらだけど…」

 「ご自分をお通しになるのはご立派ですが、殿様のお気持ちも少しは思いやって差し上げないと」

 「どう思いやるって言うの?」

 「お方様(まひろ)は賢いし、おっしゃることは正しいですが、殿様に逃げ場をつくって差し上げないと」

 「なぜ?」

 「夫婦めおととはそういうものだからでございます。想いをいただくばかり、己を貫くばかりでは、誰とも寄り添えません」

 「己を曲げて、誰かと寄り添う?」

 「それが、“いとおしい”ということでございましょう?」

 自分を貫いて生きてきた独身時代から、パートナーと一緒に生きるという新たなステージに入った主人公に、幸せになるための知恵が授けられました(その後の展開はどうあれ、とても貴重なアドバイスです)。

 講座では、乳母が言ったと同じこと、夫に「逃げ道を残しておく」ことが肝要とお話ししています。

 女性は白黒はっきりさせたい、自分が悪ければ謝るし、相手が悪ければそれを認めて、ひと言でいいから謝ってほしい、と思います(こう講座でお話しすると、多くの女性が強くうなずきます)。

 けれど、その感覚で夫と話そうとすると、事態が悪化することは珍しくありません。
 男性のメンタルは、女性のそれとは別物だからです。

 「自尊心の生き物」ともいわれる男性は、自分が悪いと分かっていても、なかなか非を認められません。ましてや妻から追及され責められればなおさらです。

 違いを認識して、幸せに寄り添い合っていけるよう、いとの言葉を心に留めおくのもいいかもしれません。

 思うに、責め切らず「逃げ道を残しておく」ことは、夫との関係に限らない、有益な知恵なのではないでしょうか。


 橘幸世氏の書籍はこちらから。
夫婦愛を育む魔法の法則

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