夫婦愛を育む 34
夫婦それぞれ自由がいい?

ナビゲーター:橘 幸世

 子育てが一段落した夫婦が別々の部屋で休んでいるケースは、今の時代珍しくないようです。
 夫は夫、自分は自分、と割り切っていて、夫婦というよりも共同生活者といったところでしょうか。お互いに干渉せず、休日もそれぞれ自由に過ごす――最近知り合った女性もそんな一人でした。

 その新しい友人は、子供たちが他県の大学に入り、現在はご主人と二人暮らし。二人とも会社員で、加えて彼女は週の半分は帰宅が遅くなります。平日ご主人との時間がほとんどない分、週末は一緒に過ごすのかと思えば、週末もそれぞれが好きに過ごしているとのこと。
 旦那さんより7歳年上で50代の今、結婚当初は感じなかった一種の負い目(自信のなさ)を感じていて、彼があまり構ってくれなくても仕方ないと思っているようでした。
 夫への期待を捨てていて、子供が卒業後帰って来てくれることだけを楽しみにしていると言います。寂しさから子供の人生を限定しては…と、まずは「卒業時、お子さんの意向がどうなるか分からないですよ」とだけ言っておきました。

 夜中に結構強い地震があった時、ご主人はいったんは起きてきたものの、明日仕事だからと自分を放って部屋に戻って行ってしまった、と悲しそうでした。「怖いから一緒にいてほしい」とは言えない彼女なんですね。
 「ご主人は年の差を気にしないほどあなたのことが好きになって結婚したのだから、もっと自信を持っていい」と励ますと、後日「(その言葉が)とってもうれしかった」と言ってました。素直な人です。

 夫婦間の気持ちに距離ができた理由は、彼女の話から想像はついていますが、まだそこに触れるのは早いかなと、時期を見ています。ただ、私たち夫婦の雰囲気に少し触れて、彼女の視線が旦那さんとの関係に戻ってきているのを感じます。
 以前は、関心がないからと、夫の趣味には全く付き合わなかったそうですが、先日はサッカー観戦に一緒に行ってきたとのこと。「その調子! どんどん付き合ってみたらいいですね」と笑顔で後押ししておきました。

 愛されたいけれど自信がない、傷つきたくない、だから求めない、寂しさを隠して仕事に自分の居場所を求め、生きている。老後は別の土地で生きようかな(あらら、ご主人はどうするの?)などと言っていた日々から、小さな一歩を踏み出した感の彼女を、ゆっくりとサポートしていけたらと思っています。