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コラム・週刊Blessed Life 315
中国、台湾を包囲し頼新政権へ軍事圧力!

新海 一朗

 5月20日、台湾では新総統・頼清徳氏の就任式が実施されましたが、早速、頼新政権に揺さぶりをかけるかのように、中国政府は台湾に軍事圧力を加える作戦を展開しています。

 5月23日と24日の2日間、台湾周辺の海域で、中国軍の航空機が延べ49機、艦艇が延べ9隻、さらに中国海警局の船が延べ7隻、活動しているのを確認したと、台湾国防部は発表しました。
 中国人民解放軍東部戦区の報道官は、「『台湾独立』の分裂勢力への懲戒だ」と、頼新政権への中国の対応を言明しています。

 この軍事的な威圧、脅迫行為は、頼政権が蔡英文政権よりも強硬であり危険であるという認識を、中国政府が明確に持っていることを裏付けていると見てよいでしょう。

 頼清徳新総統が20日の就任演説で行った中台関係に関する発言は、蔡英文前総統と同様に「現状を維持する」と述べながらも、中国が掲げる「一つの中国」の原則の完全否定とも受け取れる表現を多く用いていました。
 中国の反発は「推して知るべし」であり、台湾側でも「事実上の独立宣言」という見方が出ているほどです。

 頼氏は就任演説で「中華民国(台湾)と中華人民共和国(大陸中国)は互いに隷属しない」と訴え、台湾と中国の正式名称を用いて双方が対等の関係だと主張しました。

 また頼氏は、「中華民国の国籍を有する者を、中華民国の国民とする」との台湾の憲法の規定に言及、「中華民国の国籍」を持たない中国の人々を「国民」に含めない立場を示しました。

 頼氏は、昨年1月の記者会見で、「台湾は既に独立国家であり、改めて独立を宣言する必要はない」と語っていました。

 こういった一連の頼総統の発言は、中国政府から見ると、21日付の人民日報が頼氏の演説について指摘したように、「『台湾独立』に対するかたくなな立場を露呈した」となるわけです。

 台湾でも、中国を忖度(そんたく)する最大野党・国民党は「(中台を別々の国と見なす)『二国論』をはっきりと表面化させ、国民の不安を招いた」と批判し、主要紙・聯合報も「頼氏が台湾独立工作者であることを改めて証明した」と論じました。

 習近平主席は、20233月に行われた全人代(全国人民代表大会)閉幕式の演説で台湾問題に言及し、「外部勢力の干渉と『台湾独立』分裂活動に断固反対し、祖国統一のプロセスを断固推進しなければならない」と表明しています。

 祖国統一の最大テーマが、香港と同じような運命を台湾にもたどらせること、台湾を完全従属させることであるのは明白です。

 これに抵抗しているのが頼清徳総統であり、彼は米国や日本、その他の外国勢力(オーストラリア、イギリス、フランスなど)との強い連携によって中国政府の干渉を断固拒絶する姿勢を示しています。

 厄介な民進党の闘士が、総統に就任したものであるというのが中華人民共和国の本音でしょう。
 今回のような軍事威圧は、これからも継続されることは間違いありません。
 ただ、容易に軍事作戦に入ることはできないはずです。米国の軍事力のプレゼンスが排除されない限り、台湾奪取は不可能だからです。

 また、現在の中国経済の危機的状況、崩壊寸前の瀬戸際にあっては、台湾に向かって軍事行動を起こすほどの余裕は中国にはありません。
 軍事威圧作戦を継続させるのみで、示威行動には限界があると言わざるを得ません。