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【B-Life『世界家庭』コーナー】
フィリピン便り②
「ゲップが感謝に変わるとき」

 2010年から2011年まで『トゥデイズ・ワールド ジャパン』に掲載された懐かしのエッセー「ハロハロ フィリピン便り」を、特別にBlessed Lifeでお届けします!

 筆者のトゥパス サチコさんは、3億6千万双のフィリピン・日本家庭です。

※ハロハロとは、タガログ語で「混ぜこぜ」を意味する言葉。フィリピンの代表的なかき氷デザートを指す。

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 主人の実家は、代々カトリック教徒です。篤実なクリスチャンですが、私は主人の実家に行くと、どうしても気になることがありました。食事のあと必ずゲップをして、「サンキュー」と小声で言うことです。

 これは、両親に限らず、フィリピンの人は、同じようにしている気がしました。私の主人も、堂々とゲップをするのです。

 そして、なぜ「サンキュー」なのか? 不思議でたまりませんでした。初めは主人に気兼ねして、尋ねませんでしたが、次第に、とても気になるようになってきて、ある食事の場で主人に聞いてみました。

 「なぜ、ゲップをした後、サンキューと言うの?」

 主人は、なぜそんな質問をしてくるのか不思議そうな顔をしながら、反対に「日本ではなんて言うの?」と聞き返してきたのです。

 私が、「失礼しました、と言うかな」と答えると、主人はとても驚いたようすでした。

 そして主人が言いました。

 「『サンキュー』と言うのは当たり前じゃないか! おなかがいっぱいになればゲップは出る、おなかをいっぱいにしてくれた神様に感謝しているんだよ」

 私は、主人が驚いた以上に驚きました。まさか、ゲップ一つでカルチャーショックを受けるとは思ってもみませんでした。

 日本にいるときは、人前でゲップをするのは失礼であると、ずっと思ってきたことが、一つ国を越えれば感謝につながっている。小さいころから教育を受けてきた宗教観、道徳観の違いをつくづく感じさせられました。

 フィリピンはアジア唯一のキリスト教国家で約85パーセントがカトリック教徒です。プロテスタントも含めるとキリスト教徒だけで約93パーセントを占めると言われています。

 この国でしか味わえない神様との情の世界を学びながら、一刻も早くこの国・フィリピンを父母様の願う神様の国にしていきたいと思うばかりです。

▲マニラ湾の夕日

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(この記事は、『トゥデイズ・ワールド ジャパン』2010年9月号に掲載されたものです)