2024.05.17 12:00
孝情を育む 23
『ムーンワールド』で連載された、蝶野知徳・家庭教育部長による子育てに関するエッセーを毎週金曜日配信(予定)でお届けします。
孝情を育む子女教育について、どんな姿勢で向き合えばいいのかを分かりやすく解説しています。
家庭教育部長 蝶野知徳
思いを解いて接する
自分の過去の思いを観察する
親自身が子女を通じて体験することは全て、私の復帰すべき情と深い関係があります。子女に向かう時の心だけを対象にするのではなく、過去の私から現在に至るまでの家族関係で抱えてきた「思い」を観察すると、現在の子女に対する思いと絡んでいることに気づかされます。子女への思いは、子女から誘発されて体験しています。つまり誘発をされる私自身の中に、血統の中に、先にあるものだとも言えます。
例えば、父親と息子との関係が疎遠で心が通じないという場合、多くは父親自身とその実父との関係が鍵になっています。実父に対してわだかまってきた思いが解かれていくと、息子との関係も解かれていくという例を多く見ます。また、父親が娘との関係を考える場合には、自分と実母との関係、あるいは妻との関係がそこに絡んでいると見れば、子女の中でその思いを担当している子女は誰かという見当もつくようになります。ただし、関係が難しくなる原因まで同じになるのではありません。蕩減すべき内容が背景としてある中で、当事者たちの個性や事情に合わせて問われているものがあるということです。
母親から見た息子との関係においては、同様に実父や、夫との関係を見ていくようになります。母親から見た娘との関係は、自分の実母との関係を見ていくようになります。全てとは言えませんが、おおむねヒントが隠れているものです。
過去の私の思いを解く
ここで押さえておくべき点は、例えば父親が息子との絆を深めるためには、自分と実父との関係を修復しなければならないということではなく、まず実父に対する思いが自分自身の中で解かれているかどうかです。その後、実体での和睦も望まれますが、象徴的に関係を繕うのではなく、自分自身の心の中から、「実父に対する思い」が解けている、ということがまず重要になります。その解けた思いから、息子を見るときに潜在的な部分で変化が起こるからです。
関係が良くなかった実父が既に他界しているという場合などは、祈祷等を通し、自分も父親になって、息子との関係の難しさ、その当時の実父の立場や気持ち、背負っていた事情などを分かる範囲で同情しつつ、その実父を心から許しながら、慰労や感謝を捧げてみましょう。それはとても尊いことです。
息子とのわだかまりが解けるという希望から、親を許す心を持つことで復帰できる場合もあります。子女教育に限らず、自身の体験を自分の責任を中心として摂理的に捉えてみることは大切だと思います。
---
次回は、「子女の問いに答えるということ」をお届けします。