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孝情を育む 17

 『ムーンワールド』で連載された、蝶野知徳・家庭教育部長による子育てに関するエッセーを毎週金曜日配信(予定)でお届けします。
 孝情を育む子女教育について、どんな姿勢で向き合えばいいのかを分かりやすく解説しています。

家庭教育部長 蝶野知徳

よく手が出てしまう子

暴力的な子?
 子供が、兄弟や友達に怒って、よく手を出すという悩みを持ったお母さんがいました。お母さんは善悪をしっかり教えようと思い、「それは悪いことだからやってはいけません」と、そのつど叱ってやめさせていましたが、一向におさまらないのだと言います。

 親は、あまりにそれが続くと「この子は元々暴力的な子なのだろうか」と心配になってきます。思いどおりにいかないと、すぐ人に手を出すというのは、自制心がないとか、生まれつき暴力的な子だとか、そういうわけではありません。お母さんに言いたいことが言えていないことが多いのです。これは気の小さい子に多いようです。気持ちの表現が苦手で、甘えたくても甘えられない、いわば“悲しみ”のような感情が蓄積されているのです。

自分の持つ悲しみを伝えている
 幼い頃から、お母さんに叱られてばかりいると、悲しみの思いは溜まる一方なので、欲求不満となり、悪循環を生みます。

 誰かに手を出すことで、相手を悲しませ、泣かせることで、自分が持っている悲しみを伝えようとして起こすのです。中高生や成人後の家庭内暴力なども、基本的には同じことです。ですから、叱ってばかりいたり、伝えようとしている悲しみに対して無視したりして、気づかずにいると、暴力はおさまるどころか、ますますひどくなっていくのです。

叱るより、ただ抱き締める
 兄弟でたたいた側とたたかれた側がいる場合、たたかれた子にももちろん、慰めが必要ですが、たたいた子のほうをしっかり抱き締めて、その悲しみを解くことが良いのです。

 二人の子供の関係が問題なのではありませんから、仲直りさせる必要もありません。そこに労力を使うのではなく、たたいた側の子を、ただしっかりと抱き締めてあげてほしいのです。そして家では、極力、手を出してしまう子供との時間を多く持つことが大切です。甘えさせるのです。子供にしてほしいことを聞いて、できることは何でもしてあげるのです。これはぜいたくをさせるということではなく、時間と、お母さんの心、手間、体を使って、遊んであげたり、会話をしたりして、悲しみの思いを解いて喜びに満たしてあげるのです。そうやっていくならば、手を出す癖などは、必ずなくなっていきます。

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 次回は、「大切な三つの時間」をお届けします。


◆「孝情を育む」が書籍になりました! タイトルは『子女と向き合うことは神様と向き合うこと』
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