政治の怠慢、「科学技術立国、日本」が危機に!(1)

(U-ONE TV『KMSビューポイント』第39回より)

ナビゲーター:木下 義昭

 日本は資源小国ですが、科学技術立国の道を歩み、加工貿易を推進し、優れた製品を輸出しながら、日本の経済を発展させてきました。
 しかし、現状を見ると、日本の将来は今までのようにはいかない、危機的な状況にあると言えます。特に、政治家がしっかりしていないことが問題です。
 今回は、日本の科学技術について、政治家はもっと真剣に取り組まなければならないということを指摘しておきたいと思います。

 世界で最も権威のある学術雑誌の一つ、イギリスの学術雑誌『Nature』2017年3月23日号の特別冊子「Nature Index 2017 Japan」でも、「日本の科学研究の失速」が指摘されています。特に深刻なのは、「日本の研究がゆっくりと降下している」ということです。

 同誌が取り上げている主な問題点を3点紹介します。

① 日本の論文出版数について
 2005年から2015年にかけての出版本数は横ばい。しかし、世界全体の出版数は年々増加しているので、全体における割合は低下している。世界の論文のトータル数は2005年から2015年で80%増加しているにもかかわらず、日本の論文数は、わずか「14%の増加」にとどまっている。

② 高品質論文の世界シェア
 日本の高品質な論文の世界シェアは減少しており、日本と同様にシェアの減少が見られるのは米国。中国とイギリスは増加傾向にある。

③ 医学・科学技術に関するコンテンツを出版する「エルゼビア」の副社長・カールソン氏の分析
 日本がこの10年で3分の1以上も世界シェアを失ったことについて、「2000年以降、日本は科学分野において17もノーベル賞を受賞しているが、日本の人口自体が減少していることが研究者の減少につながっている。また、研究に対する投資が増加しないことがパフォーマンスにも影響している」と、カールソン氏は分析。「日本が世界的なシェアを失うことで、世界的なインパクトも失っている」とも語っている。

▲文部科学省

 8月22日に文部科学省が日本の研究開発費について発表しました。
 「2016年の日本の研究開発費は18兆4000億円で、2年連続減少。欧米や中国などの主要国の中で減少したのは日本だけ」であるとしています。

 2014年は19兆円、2015年は18兆9000億円、2016年は18兆4000億円(前年比2.7%減)でした。

 研究開発費の2016年の内訳を見ると、民間企業が13兆3000億円(前年比2.7%減)、大学が3兆6000億円(前年比1.1%減)、研究機関が1兆3000億円(前年比7.3%減)となっています。

 国別では米国、中国に次いで日本が3位です。しかし、米国、中国、英国、フランス、ドイツ、韓国などの研究開発費は増加しています。

 このような現状を、文部科学省はある程度認識はしています。

 今年(平成30年6月12日、平成30年度版)の『科学技術白書』では、科学技術イノベーションの基盤的な力のさらなる強化に向けて人材力、知の基盤、研究資金などに注目し、現状と課題を分析しながら、今後の取り組みの方向性を示しています。

 主な現状と課題を見てみましょう。

・論文の量・質の低下
・大学発ベンチャーの成長
・博士課程進学者・若手研究者の減少
・新たな研究領域への挑戦の不足
・研究開発費総額の伸びの停滞
など

 白書は、博士課程への社会人入学者が増加傾向にある一方、修士課程から博士課程への進学者数が減少傾向にあることも指摘しています。

 問題は「すぐに結果を求める」「すぐに役立ちお金になることを追求する」ことです。大きな成果を得るには、時間と費用、忍耐が必要なのです。(続く) 
     

(U-ONE TV『KMSビューポイント』第39回「政治の怠慢、「科学技術立国、日本」が危機に!」より)

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