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孝情を育む 14

 『ムーンワールド』で連載された、蝶野知徳・家庭教育部長による子育てに関するエッセーを毎週金曜日配信(予定)でお届けします。
 孝情を育む子女教育について、どんな姿勢で向き合えばいいのかを分かりやすく解説しています。

家庭教育部長 蝶野知徳

喜びの共感と情緒の形成

お母さんが大好きで生まれた子女
 子女は皆、お母さんが大好きで生まれてきています。お母さんと一緒に喜びを共感したいと思っています。ですから、生活の中で、「うれしい」という体験を、お母さんと共有することが情緒形成の重要なポイントになるのです。

 特に幼児期の教育において、親はしつけや戒めなどを強く意識する必要はありません。甘えや甘やかしに気をつける必要もありません。子女が体験したいのは、愛するお母さんとの喜びの共感です。

 まず大切な点は、“子女の喜ぶことをしてあげることが、お母さん自身の喜びになっている”ということです。我が子が相手ですから、かわいくてしかたがないと思うのですが、実は子女は自分の喜んでいる姿を、お母さんが喜んでくれているかどうかを見ているのです。「自分が喜ぶことでお母さんが喜んでくれている!」という体験が貴重なのです。

 乳児と一緒にハイハイをしてあげる時に、ただするのではなく、お母さん自身が、子女の喜びに対して、喜んでいてほしいのです。子女は、必ずお母さんの笑顔を見たり、感じたりしています。自尊感情の形成は、ここから始まっているのです。

子女が求めているのはお母さんとの共感
 誤解されやすいのですが、この時期の子供の「甘え」というのは、ネガティブな要素のものは何一つありません。何かをおねだりして泣きわめいたりしても、極力そのとおりにしてあげながら、本人が喜んだ時に、お母さんの喜ぶ顔を見せてあげることです。物を与えて終わり、言うことを聞いてあげて終わりでは、喜びを共有できないので、わがままに際限がなくなるのです。

 「この僕の喜びに、お母さんも喜んでくれるかな?」という愛の確認の作業なのですから、子女が求めているのは褒められることではなく、お母さんに喜んでもらって、その喜びを共感することであることを忘れないでください。

 もし、親の都合や事情に子女が合わせてくれたときだけ親が喜んでいれば、子女は自分の喜びが無視されているので、複雑な感情を抱えるようになってしまいます。

 「お母さんの喜びは僕が喜ぶことであり、僕が喜ぶことでお母さんを喜ばせることができるんだ!」という体験が、子女の安心感を育て、感情のコントロールができる子にしていくのです。わがままを言って泣いていた子も、自分の喜びでお母さんも喜んだら、今度はお母さんを喜ばせるために何かをしたいと思うようになるのです。これがしつけやけじめの基盤になっていくのです。

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 次回は、「母の安心感が子女の安心感へ」をお届けします。


◆「孝情を育む」が書籍になりました! タイトルは『子女と向き合うことは神様と向き合うこと』
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