2024.03.10 17:00
【テキスト版】
ほぼ5分でわかる介護・福祉Q&A
介護・福祉について分かりやすく解説する「ほぼ5分でわかる介護・福祉Q&A」のテキスト版をお届けします。
ナビゲーターは、家庭連合本部の宮本知洋福祉部長が務めます。動画版も公開中ですので、併せてご視聴ください。
第14回 高齢者福祉編⑬
家族の介護をしていますが、最近疲れたのか何もやる気が起きません
ナビゲーター:宮本 知洋(家庭連合福祉部長)
今回は、「家族の介護をしていますが、最近、疲れたのか、何もやる気が起きません。どうしたらいいでしょうか?」という質問です。
介護が長期にわたると、介護者は知らないうちに疲れが溜まり、自覚のないまま虚無感に襲われたり、不安で何も手につかなくなったりすることがあります。
その場合、誰もが陥る可能性がある、介護うつと呼ばれる状態になっているのかもしれません。
介護者は、要介護者の排泄や入浴、食事、更衣の介助などをするため、身体的負担がかかるのはもちろんのこと、精神的負担も相当かかります。
例えば、周囲に理解されないことで生じる疲労や孤独感、要介護者の言動へのいら立ち、怒鳴り返してしまって陥る自己嫌悪などです。
認知症の人を介護している場合は、認知症特有の理解できない行動に振り回されて疲れ果ててしまう、ということも少なくありません。
さらに、介護費用がかさんだり、職を失って収入が途絶えたりする経済的不安もあります。
身体的負担、精神的負担、経済的負担の上に介護疲れが重なり、介護うつを引き起こすことになります。
介護うつの身体的症状には、めまい、下痢、便秘、偏頭痛、不眠、過食などがあります。
そして、趣味にも興味が持てなくなり、人と会うのが億劫で外出しなくなったりします。
また、イライラしたり、落ち着かなかったり、マイナス思考に陥るなど、さまざまな形で精神的症状が現れます。
介護うつは、医療によって治療が可能ですから、何らかの症状に気付いたら、早めに受診するようにしましょう。
介護うつにならないためには、介護疲れを溜めないことが大切です。
介護負担を軽減する方法をご紹介しますので、参考にしてください。
まず、ケアマネージャーに適切な介護サービス計画を立ててもらうことが負担軽減の基礎となります。
ケアマネージャーには、体裁にこだわらず、事情や気持ちを率直に伝えて計画を立ててもらうことが重要です。
必要ならば、通所系サービスやショートステイなどのレスパイトケア(小休止)を利用することもできます。
配食サービスや外出付き添い、安否確認サービスなど、介護保険外のサービスを利用するという方法もあります。
また、自治体ごとに定められた独自の支援サービスや介護費用負担を緩和する制度など、行政サービスを利用するという選択肢もありますので、どんなものがあるか、一度確認してみてください。
各種サービスの利用と共に、専門的な内容を相談できる人を作ることも重要です。
特にケアマネージャーは守秘義務を負った身近な相談相手です。
また、主治医や精神科医に相談したり、同じ悩みを抱える家族会に参加したりするのもよいでしょう。
さらに、介護教室を利用し、最低限の介護知識や技術を身に付けることも、結果として介護疲れを溜めないことにつながると思います。
そして、それでも大変な場合は介護施設に入所してもらうことも一つの方法です。
施設で介助を受けることで、本人も家族も落ち着く場合があります。
介護うつになりやすい人は、「自分がやらなければ」と一人で抱え込んで頑張り過ぎてしまうという傾向があります。
頑張り過ぎはストレスのもとです。介護ストレスの解消のために、時には介護から離れて息抜きをすることも必要です。
誰かに弱音や愚痴を吐き出したり、映画を見て思いきり泣いたり、大声で歌ったり、好きな物を食べたり、軽く運動したりするなど、自分に合ったストレス解消法を見つけ、実践してみたらよいと思います。
介護の場合、ただ頑張ることが美徳だとは限りません。介護者が倒れてしまったら、介護する側にとっても、される側にとっても幸せなことではありません。
一人で背負わず、自分を追い込まず、自分自身を労うことも忘れないでください。
また、少し肩の力を抜いて視点を変えてみると、介護を通して得ることもたくさんあることが分かります。
そのようなことも喜びにすることができれば、理想的です。