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【テキスト版】
ほぼ5分でわかる介護・福祉Q&A

 介護・福祉について分かりやすく解説する「ほぼ5分でわかる介護・福祉Q&A」のテキスト版をお届けします。
 ナビゲーターは、家庭連合本部の宮本知洋福祉部長が務めます。動画版も公開中ですので、併せてご視聴ください。

第13回 高齢者福祉編⑫
一人暮らしの母親の認知症が進み、判断能力が低下していて心配です

ナビゲーター:宮本 知洋(家庭連合福祉部長)

(動画版『ほぼ5分でわかる介護・福祉Q&A』より)

 今回は、「一人暮らしの母親の認知症が進み、判断能力がかなり低下してきたようです。お金の管理ができるか、だまされて何かの契約をさせられたりしないかなど、心配です。どうしたらよいでしょうか?」という質問です。

 前回ご説明した日常生活自立支援事業は、ごく軽度の認知症などで判断能力が十分でない人を保護するためには有効なサービスです。

 しかし、認知症が進み、さらに判断能力が低下してきた場合は、その制度ではカバーできなくなり、成年後見制度への移行が求められるようになります。

 今回は、成年後見制度について説明します。

 成年後見制度とは、認知症や知的障がい・精神障がいなどで判断能力が十分でない人の意思を尊重し、その権利と財産を守り支援するための制度です。

 後見人などが代理して必要な契約を結んだり、財産を管理したりして、本人の保護を図ります。

 以前は判断能力が不十分な人のための制度として禁治産・準禁治産者宣告制度がありました。

 しかし、この制度では禁治産者であることが戸籍に記載されるため、社会的な偏見や差別を生むという問題が指摘されていました。

 また、軽度の認知症や知的障がいの人のように、ある程度は自分でできるが、難しい契約などはできないという人への法的サポートはありませんでした。

 そこで、平成12年(2000年)、介護保険制度と共に新しくスタートしたのが成年後見制度なのです。

 成年後見制度には大きく分けて法定後見と任意後見があり、さらに法定後見は利用する人の判断能力の程度に応じて後見、保佐、補助の三つの制度に分けられます。

 後見は判断能力が欠けているのが通常の状態の人を対象、保佐は判断能力が著しく不十分な人を対象、補助は判断能力が不十分な人を対象としており、後見人、保佐人、補助人に与えられる権限や職務の範囲はそれぞれ違います。

 成年後見人の主な職務としては、本人の財産や収入を把握し管理することが挙げられます。

 具体的には財産目録の作成や裁判所への定期報告などです。
 また、医療費や税金などの支払い管理を行い、必要に応じて介護サービス利用契約や施設への入退所契約なども代行します。

 ただし、婚姻や離婚、養子縁組などの戸籍に関する契約変更や遺言書の作成、医療行為への同意などはできません。

 では、成年後見制度はどのような場合に利用することが多いのでしょうか。
 最も多いのは預貯金などの管理・解約の際です。

 次いで、身上保護、介護保険契約、不動産の処分、相続手続の順になっています。

 身上保護というのは、要介護認定の申請手続きや住宅の確保、入院手続きなど、本人の生活環境を整えるための法的手続きです。

 また、施設入所のために介護保険契約を結びますが、その際も親族には本人を代理する権限がないため、後見人などが必要となります。

 成年後見制度を利用するためには、まず家庭裁判所に審判を申し立てる必要があります。

 申し立てを行うのは、基本的には本人、配偶者、または四親等内の親族です。

 申し立てを行うと、審問(裁判所が事情を尋ねること)、調査、鑑定(本人に判断能力がどの程度あるかを医学的に判定すること)などが行われた後、後見などの開始の審判と成年後見人などの選任がなされ、その後、審判が確定されます。

 なお、もう一つの任意後見制度は将来、判断能力が不十分となった時に備えるためのもので、判断能力があるうちに本人が任意後見人を選んでおくことになります。

 こちらの場合は、本人が後見人を誰にするか、何をしてもらうかを決め、契約で定める形となります。
 契約は公正証書で締結することになりますので、公証人役場に赴く必要があります。
 そして、契約を結んだ後、本人の判断能力が低下した時点で家庭裁判所に申し立て、任意後見の開始と監督人の選任がなされることになります。