2024.03.08 22:00
【テキスト版】
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第178回 日本のように世界でも無宗教の人が多くなっているのでしょうか?
ナビゲーター:阿部美樹
皆さん、こんにちは!
今回は、「日本のように世界でも無宗教の人が多くなっているのでしょうか?」という質問に対してお答えします。
統計数理研究所「国民性調査」(2013年)によると、日本人の7割以上が信仰や信心を持っていないと公言しています。
2018年に行われた調査では、「何らかの宗教を信仰している」(冠婚葬祭時だけの宗教を除く)が36%、「信仰している宗教はない」が62%という結果も出ている(NHK放送文化研究所「ISSP国際比較調査」2019年)など、無宗教者が多いといわれています。
世界の状況はどうでしょうか。
ピュー・リサーチセンターの調査(2018年)によると、宗教の役割に対する認識は世界を二分していることが明らかになりました。
インドネシア、ナイジェリア、インド、ブラジルなどでは、過半数が自国で宗教の果たす役割が20年前に比べて「より大きくなった」と答えましたが、英国、米国、日本などでは逆に、「より小さくなった」との答えが過半数を超えました。
日本や西側先進国を見ると宗教が退潮する一方ですが、グローバルサウスと呼ばれる新興国では宗教が強い影響力を保っています。
グローバルサウスとは、主に南半球の国々に対して使われることが多く、新興国や発展途上国を指しますが、人口増加に伴い今や飛躍的な発展が期待される兆しがあり、世界の注目を集めています。
インドは2022年に総人口が世界最多になりましたが、IT産業など経済活動が活発化しています。
インドはヒンドゥー政党が政権を握り、世界第4位の人口を有するインドネシアは世界一のイスラーム大国であり、世界第5位の人口を有するブラジルではキリスト教の福音派が急速に勢力を拡大しています。
ピュー・リサーチセンターの推移(2015年)によると、2010年から50年間に、キリスト教は21億7000万人から29億2000万人になり、ムスリムが16億人から27億6000万人になると予想しました。
一方、特定の宗教を持たない層は、11億3000万人と微増にとどまり、世界人口に占める比率は16.4%から13.2%になり3パーセント余り低下する予測です。
逆に、キリスト教、イスラームを合わせた一神教信者は合計で6割を超えると予想されています。
西側先進国にはびこる「反宗教」的な空気は、国内の保守勢力との分断を加速するばかりではなく、新興国の不信と離反を招き始めています。
例えば、カトリックの世界司教会議では、同性愛容認に傾く欧米の進歩的な聖職者と、保守的な立場を堅持するアフリカや東欧、米国の保守的な聖職者との間で、激しい対立が起こっています。
アフリカの司教たちは、信者数が減少する欧米に対して、伝統的信仰から遠ざかっていることが理由だと手厳しい批判をします。
現実的にも、家庭やコミュニティーが崩壊し、心の病がまん延する欧米社会は、新興国にとってはもはや「憧れ」の対象ではなく「反面教師」と見られ始めています。
このように、ますます世俗化するG7などの西側先進国と、宗教色を強める新興国とのギャップは広がる一方です。
今後、新興国の存在感が高まるにつれて、宗教間の調和と相互理解、宗教的少数派の権利擁護が主要な課題となってくるでしょう。
日本を含む西側先進国が指導力を発揮しようと望むなら、まずは自国内で「反宗教」的なイデオロギーから脱却し、さまざまな宗教の共存を保障する「信教の自由」の原点に立ち返ることが必要でしょう。