2024.02.26 17:00
コラム・週刊Blessed Life 303
ロシアのウクライナ侵攻から2年
新海 一朗
2022年2月24日のロシアのウクライナ侵攻から2年が経過しました。
侵攻当初、プーチンは短期間のうちに首都キーウを掌握し、ゼレンスキー政権を崩壊させ、親ロシアの傀儡(かいらい)政権を樹立することを目指していました。
しかし予想に反して、ロシア軍の劣勢が顕著になり、プーチンの描くロードマップは崩れました。
その理由は、米国や西欧諸国によるウクライナへの莫大な軍事、財政支援です。
ウクライナに対して高性能の武器や軍事品が供与され、ウクライナ軍の攻勢にロシア軍は多くの兵士を失い、ウクライナ領土に何とか踏みとどまるのが精いっぱいでした。
時間の経過とともに顕著になったのが、欧米諸国のウクライナへの支援疲れです。
ウクライナへの支援規模は次第に縮小され、今日多くのEU(欧州連合)諸国でウクライナ支援が国民から評価されるものではなくなってきている状況です。
ウクライナ軍は大規模な反転攻勢をロシア軍に仕掛けましたが、期待されたような結果は出ていませんし、ウクライナ自身の戦闘疲れの中、ロシアは既成事実化を進めています。
このような情勢の中、ロシア大統領選を控えるプーチンは自らに有利な状況が訪れていると確信しています。
いくつか理由があります。
まず、中国やインドなど、グローバルサウスの存在です。
侵攻から2年がたちますが、ロシアに経済制裁を実施しているのは、欧米や日本など40カ国余りであり、制裁下でもロシアは安価なロシア産エネルギーに接近してくる発展途上国との関係を強化するなどして、その被害を最小限度に抑えることに成功しています。
ウクライナ侵攻後、欧米がロシアにできることには限界があり、ロシアは政治的に孤立せず、経済的には非欧米諸国と関係を強化すればいいというのが、プーチンの考えでした。
そして何といっても、欧米諸国の支援疲れです。プーチンは米国の行方を注視しており、米国議会ではウクライナ支援について共和党からの厳しい反対意見が支配的となり、支援継続を求めるバイデン政権は苦しい立場にあります。
バイデン大統領は政治的な指導力が弱く、大統領選の相手は強権なトランプ氏です。トランプが大統領に返り咲けば、ウクライナ支援は停止される可能性が高いのです。
トランプが勝利すればプーチンは真っ先に祝福メッセージを送り、トランプとの関係強化に乗り出すことは間違いありません。
トランプとプーチンの関係はそれほど悪いものではないからです。
こういった有利な展開を確信する中、プーチンは3月に大統領選挙に臨みます。
といっても対立候補者は存在せず、2030年までのプーチン政権の続行は確定済みであるといえます。
関西テレビ(「newsランナー」2024年2月22日放送)で語ったウクライナのボグダン・パルホメンコさんの言葉は意味深長です。
「戦争が始まったタイミングでどちらも負けなんです。戦争を起こさないことが勝ちだと僕は思っていて、起きてしまったので、完全勝利パーフェクト勝ちっていうのはもう起きない。
…2年のタイミングで気持ちを切り替えて、現実的な着地点というのを探して、そしてその代償がやっぱり一人一人の命、本当に多くの仲間が亡くなっていますので、それを理解した上で、判断していくことが重要なのかなと思っています」
一日も早い停戦を願っています。