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コラム・週刊Blessed Life 302
北朝鮮で今、何が起きているのか

新海 一朗

 北朝鮮で今、何が起きているか。
 朝鮮労働党の金正恩(キム・ジョンウン)総書記の発言や行動が何かおかしい。

 このような記事を産経新聞(214日付け)に投稿したのは、西岡力氏でした。

 金正恩総書記は昨年末の党中央委員会総会で「大韓民国の連中とは、いつになっても統一が実現しない。(略)北南関係は、同族関係、同質関係ではない敵対的な両国関係、戦争中にある両交戦国関係である」と言い切りました。

 南のことを「大韓民国と正式国号で呼んだこと」、韓国を「同族でなく交戦中の外国と位置付けたこと」は、これまでの北朝鮮の対南政策を根本から覆す驚くべき内容であったと、西岡氏は言います。

 このような発言をもとに、今年の115日の最高人民会議(国会)で、金正恩氏は「首都平壌の南の関門に無様(ぶざま)に建っている『祖国統一三大憲章記念塔』を撤去する」と演説しました。

 この演説からわずか数日後、実際に記念塔は撤去されました。
 その記念塔は、2001年に金正恩氏の父である金正日(キム・ジョンイル)総書記が建てた、平壌の南の統一通りにある高さ30メートルの巨大な建造物で、韓国と北朝鮮を象徴する女性二人が手をつなぐ形をしていました。
 すぐ横には、金正恩氏の祖父の金日成(キム・イルソン)主席直筆の言葉が刻まれた石碑もありました。

 その塔が記念する祖国統一三大憲章とは、金日成主席が提唱した、祖国統一三大原則(1972年)、高麗民主連邦共和国創立方案(1980年)、全民族大団結十大綱領(1993年)を指しています。
 つまり、金正恩氏は金日成主席が提唱した統一の原則を記念するために、2代目の金正日総書記が建てた記念塔を撤去してしまったのです。

 国営メディアの朝鮮中央通信によると、北朝鮮は、216日、故金正日総書記の生誕82年の記念日を迎え、金徳訓(キム・ドクフン)首相や朝鮮労働党と政府の幹部らが、故金日成主席と金正日氏の遺体が安置されている平壌の錦山太陽宮殿を訪問したと、17日伝えました。
 金正恩党総書記は含まれず、この記念日に際して訪問が伝えられなかったのは3年連続であるということです。

 北朝鮮では、216日(金正日総書記の生誕日)と、415日の金日成氏の生誕記念日は、国を挙げて祝賀する最大の祝日です。
 金正恩氏が2011年末に事実上の最高指導者に就任して以降、おおむね毎年、二人の生誕記念日に合わせた宮殿訪問が伝えられてきましたが、昨年は初めていずれの記念日に際しても訪問が報じられませんでした。

 北朝鮮が今年に入り、南北統一を放棄したと見られること、朝鮮労働党の金正恩総書記が韓国を「徹頭徹尾、第一の敵対国」と呼び、韓国が挑発するなら「超強力的な手段で壊滅させる」と宣言したこと、「統一」「和解」「同族」という概念を北朝鮮の民族史から完全に除去すると述べたこと、これらの言葉が示す北の姿勢は、正恩氏は祖父、金日成主席の統一案の「高麗連邦制」を完全に放棄したとしか考えられません。

 一体、背景に金正恩総書記のどんな戦略があるのか。さまざまな分析の中に、11月の米大統領選で「第2次トランプ政権」の登場が確実であることをにらんでいるとの見方も出ています。

 北朝鮮は、現在、ロシアとの関係を強め、ウクライナ戦争で武器の供給に躍起になっているロシアを助ける姿勢を取っています。
 北朝鮮の動きに目が離せなくなった緊迫の朝鮮半島情勢です。

 しかし一方、西岡氏の投稿記事によれば、脱北者活動家や情報機関関係者らは、「韓国の情報が大量に北朝鮮に流入し、豊かで自由な韓国への憧れが急拡大し、韓国による吸収統一を望む者らが大量に発生して抑えきれなくなったことが理由だ」と説明しているといいます。

 さまざまな見方がある中で、北の限界説から統一への道筋の可能性まで、よくよく注視する必要があります。