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ダーウィニズムを超えて 45

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「ダーウィニズムを超えて」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
 生物学にとどまらず、社会問題、政治問題などさまざまな分野に大きな影響を与えてきた進化論。現代の自然科学も、神の創造や目的論を排除することによって混迷を深めています。
 そんな科学時代に新しい神観を提示し、科学の統一を目指します。

統一思想研究院 小山田秀生・監修/大谷明史・著

(光言社・刊『ダーウィニズムを超えて科学の統一をめざして』〈2018520日初版発行〉より)

四章 創造神話と新創造論

(六)原初の質料

 無から創造がなされたという創造神話があるが、それはエクス・ニヒロ(ex nihilo)またはデ・ノヴォ(de novo)型創造と呼ばれ、特に一神教の宗教に顕著に見られる。その他に、原初に水(海)や土(泥)があったという神話もある。

1)キリスト教の「無からの創造」
 キリスト教における「無からの創造」はアウグスティヌスによって確立された。神は無から質料を創造し、その質料をもとにして世界を創造した。すなわち、全能なる神は、何の材料もなく、どんな手段も使わずに宇宙を創造したのである。

2)イスラム教の「無からの創造」
 『コーラン』によれば、アラーは二日間で、ただ「あれ」と叫びながら、天地を創造された。それはまさに無からの創造である。

3)仏教における世の初め
 仏教では、世界の創造に関してはあまり関心がもたれていないが、初期のインド仏教の経典は、この世の終わりと新しい世の創造について語っている。そこでは創造者にあたる存在はない。初めに、すべては水と闇に覆われていた。長い間、日も月も星もなく、季節の移り変わりもなく、生き物も人もいなかった。やがて熱い乳が次第に冷めて表面に皮ができるように、水の上に地ができた。そして肉体をもつ者が現れ、日と月と星が現れ、男と女の両性ができたという(*15)。

4)土や原初の海(水)からの創造
 原初の海からの創造も、多くの創造神話に共通して見られる主題である。土から造られたという説もある。そして超越神が動物(あひる、亀など)を原初の海の中へ潜らせ、水底から採った泥土で創造されたという潜水型の創造神話もある(*16)。

5)現代科学の「無からの宇宙創生論」
 宇宙論研究者、ビレンキン(Alex Vilenkin)は「無からの宇宙創生論」を発表した。ある時、突然、時間も空間もない「無」から、素粒子より小さい閉じた宇宙が、エネルギーの壁をトンネルのようにくぐり抜けて誕生したという。ここでビレンキンの言う「無」とは、何もない無ではなくて、「何かに満ちている無」、「とてつもない力を背後に秘めた無」であり、「真空のエネルギー」を秘めているのである。

6)新創造論から見た無からの創造
 神は何もないところから被造世界を創造された。しかし神には世界を生みだすエネルギーが備わっているのであり、そのエネルギー(前エネルギーという)によって力と物質が生じたのである。

 現代宇宙論のいう「真空のエネルギー」とは、統一思想でいう「前エネルギー」であると言えよう。神のエネルギーである前エネルギーからエネルギーが生じ、さらにエネルギーから素粒子、原子、分子、そして原初の物質である水や空気や土が生じたのである。創世記の「光があった」という聖句は、現代科学のいうビッグバンに相当し、創造神話のいう原初の物質はエネルギーに相当すると言えよう。

 現代の物理学から見れば、原初の物質であるエネルギーより光、素粒子、原子、分子が現れ、さらに水や土や空気が現れたのである。しかしながら、自然科学が発達していなかった古代の神話においては、水や土などを原初の物質と見るほかなかったのである。現代物理学から見た原初の物質(エネルギー)と古代の創造神話の見た原初の物質を合わせて表現すれば図4-16のようになる。


*15 DA・リーミング、MA・リーミング、松浦俊輔他訳『創造神話の事典』青土社、294295頁。
*16 同上、186頁。

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 次回は、「心と脳の関係①」をお届けします。


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