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幸福への「処方箋」13

 「幸福への『処方箋』」を毎週火曜日配信(予定)でお届けいたします。

野村 健二(統一思想研究院元院長)・著

(光言社・刊『幸福への「処方箋」~統一原理のやさしい理解』より)

第一部 統一原理——その基本的枠組み

第二章 幸福実現への障害発生—「堕落論」

へびの正体
 以上のことから、「命の木」とは“男性アダム”、「善悪を知る木」とは“女性エバ”のことであると解けてきましたが、ここには、アダムとエバとの性関係ということだけでは片付かない重大な問題がもう一つあります。それはエデンの園の物語に登場してくる「へび」とは何かということです。これが分かると、問題はアダムとエバとの関係にとどまらず、もっと複雑で深刻な問題がここにはあるということに気づかされます。

 それでは、エデンの園でエバに話しかけ、「善悪を知る木の実」を取って食べても死ぬことはないと、言葉巧みに誘惑した狡猾な「へび」とは一体何でしょうか。この問題を解き明かす最も重要な鍵がヨハネの黙示録12章にあります。

 「さて、天では戦いが起った。ミカエルとその御使(みつかい)たちとが、龍と戦ったのである。龍もその使たちも応戦したが、勝てなかった。そして、もはや天には彼らのおる所がなくなった。この巨大な龍、すなわち、悪魔とか、サタンとか呼ばれ、全世界を惑わす年を経たへびは、地に投げ落され、その使たちも、もろともに投げ落された」(黙示録12・7〜9)。

 ここには、ミカエルと御使いたちと戦って敗れた巨大な龍について「悪魔」とか「サタン」とか呼ばれ、全世界を惑わす年を経た「へび」と記述されており、エデンの園の「へび」とは「サタン」のことだということが疑う余地なく明確に明かされています。また、マタイ3章7節には、イエスの証(あかし)人の使命を神から託された洗礼ヨハネが、洗礼を受けに来た者に向かって、「まむしの子らよ、迫ってきている神の怒りから、おまえたちはのがれられると、だれが教えたのか」と呼びかけているのを見いだします。「まむし」は「へび」の一種であり、ここでヨハネははっきりと、人間は「へび」の子だと述べているわけです。イエス自身も、「へびよ、まむしの子らよ、どうして地獄の刑罰をのがれることができようか」(マタイ23・33)、「あなたがたは自分の父、すなわち、悪魔から出てきた者であって、その父の欲望どおりを行(おこな)おうと思っている。彼は初めから、人殺しであって、真理に立つ者ではない」(ヨハネ8・44)と同じようなことを述べているのを見いだします。

 いずれも人間を「へび」「まむし」「悪魔」の子で、その父の欲望どおりのことをしているというのです。このことから、創世記2、3章に書かれている「へび」とは、「悪魔」、「サタン」のことだということがはっきりと分かります。

 では、悪魔、サタンとはどのような存在なのでしょうか。上記の黙示録12章の記述から、それは「天」にある存在で、「ミカエルとその御使たち」と応戦するような者であることが分かります。

 「御使」とは天使のことです。ミカエルはルーシェル、ガブリエルとともに彼らを率いる天使長です。天で、「龍」やその「使たち」はそれと敵対して戦い、敗れて居る場所がなくなり地に投げ落とされたというのです。

 堕落していない天使は、アブラハムに神の重大な祝福のみ言を伝えたり(創世記18・10)、キリストの受胎に関する消息を伝えたり(マタイ1・20、ルカ1・31)、獄中で鎖につながれていたペテロを解き放って城外に導いたりする(使徒12・7〜10)など神の重要な御用を務めています。

 統一原理によれば、神は人間を霊肉を共に備えたご自身の子女として創造されたのに対し、天使は霊だけの神の僕(しもべ)です。したがって、人間は宇宙を主管するだけでなく、天使をも主管しなければならないのだとされます。ヘブル人への手紙1章14節に、「御使たちはすべて仕える霊であって、救(すくい)を受け継ぐべき人々に奉仕するため、つかわされたものではないか」と記されているとおりです。神が人間に与えた第三祝福―万物主管には、この天使の主管も入っているのです。

 天使は、個性完成した人間より劣ってはいるものの、高度の精神作用を備え、人間と対話を交わすことができ、神の意志、摂理をさえ理解している存在です。したがって、自己の位置を離れて人間をだますこともできました。すべての被造物の中でこの天使以外に、人間に対して「善悪を知る木の実」を取って食べてもいいと誘惑できるような賢い存在はありません。もちろん、動物のへびにそのような認識能力や知恵があろうはずはありません。以上、これらの点から見ても、「へび」というのは自己の位置を離れた「天使長」を象徴したものだとしか考えられないのです。

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 次回は、「天使と人間の犯罪―霊的堕落」をお届けします