2024.01.15 17:00
コラム・週刊Blessed Life 297
台湾総統選は民進党の頼清徳氏が当選!
新海 一朗
台湾の総統・立法院(国会)のダブル選挙の投票が1月13日に行われました。
米中が台湾への影響力を競う中、日本を含む東アジアの安全保障に影響する重要な選挙という意味合いがあり、日本をはじめ、世界が注目する台湾総統選挙となりました。
2期8年間を務めた蔡英文氏の次のリーダーを決める今回の総統選では、与党・民進党の頼清徳副総統(64)、最大野党・国民党の侯友宜新北市長(66)、第3勢力・台湾民衆党の柯文哲前台北市長(64)の3人が激しい選挙戦を繰り広げてきました。
台湾・蔡英文総統の後継を決める総統選は13日に投開票され、中国との統一を拒む与党・民進党の頼清徳副総統が、対中融和路線を強調する野党・国民党の侯友宜新北市長らを破り、当選を果たしました。
頼清徳氏は米国との連携を強化して防衛力を強め、安全を守る方針を強調しています。
当然、「統一は歴史の必然」とする中国の習近平主席が圧力を強めるのは必至で、中台の緊張が一層高まる可能性があります。
台湾の総統の任期は、1期4年で、連続2期までとなっています。1996年に総統直接投票が導入されてから、同じ政党が3期続けて政権を担うのは今回が初めてです。
頼清徳新総統は5月20日に就任します。
今回の選挙は、8年近い蔡英文・民進党政権の継続を国民がどう評価するかが最大の焦点でした。
頼氏は野党から対中関係の停滞の責任を批判され、また長期政権の「緩み」を糾弾されるなど、若者層の野党候補への流出を招き、最終盤まで混戦状態を抜け出せずにいました。
しかし、中国の軍事圧力や経済的な締め付けに対して、毅然(きぜん)とした態度で蔡英文氏の親米路線を継承し、貿易の対中依存からの転換を図り、台湾の安全を守ると主張してきました。
中国による選挙介入疑惑、大量のフェイクニュースの流入などへの反発も追い風となり、国民の間に広がる「今日の香港は明日の台湾」という危機感もあって、台湾アイデンティティーを重んじる支持層を固めました。
頼清徳氏は中国から「台湾独立派」として批判されましたが、対中融和路線の二氏を破り、「統一は歴史の必然」と叫ぶ習近平主席の中国共産党政権に、今後、対処していくことになります。
ロシアがウクライナを占領し、中国が台湾を占領するという対比で語られることの多い台湾問題であり、「台湾の有事は日本の有事」という日本識者層の中のもう一方の台湾危機がある中で、親米路線を強調する頼清徳氏が当選したことの意味は非常に大きいといえます。
中国の軍事覇権主義に対して安心はできませんが、米台関係の強化により、ひとまず、当面の危機(2024~2027年)を脱することができたという言い方もできるでしょう。
民進党が1月2日に公開した約4分間のPR動画の中で頼清徳氏は、「平和と民主がなければ、台湾ではなくなる。多くの人の努力の結果なのだ。私は命を懸けてでも守る」と語った彼の言葉は、台湾の多くの人々に感動を与えたといいます。
北部の貧しい炭鉱労働者の家庭に生まれ、台湾大学などで医学を学んだ後、米ハーバード大学に留学して公衆衛生の修士号を取得、1996年に医師から政界に転じた頼氏は、1999~2010年に立法委員(国会議員)を4期務めた際には、議員の議会活動を評価する市民グループから議会質問を巡って高い評価を得るなど、市民の信頼を得ました。
台南市長時代には文化や観光に関する政策を積極的に進め、清廉潔白で効率的な市政を掲げました。
蔡政権の1期目で行政院長(首相)に抜擢(ばってき)されると、20年からの蔡政権2期目では副総統として政権を支えました。
台湾を愛する頼清徳新総統の活躍を期待したいと思います。