2024.01.14 22:00
ダーウィニズムを超えて 41
アプリで読む光言社書籍シリーズとして「ダーウィニズムを超えて」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
生物学にとどまらず、社会問題、政治問題などさまざまな分野に大きな影響を与えてきた進化論。現代の自然科学も、神の創造や目的論を排除することによって混迷を深めています。
そんな科学時代に新しい神観を提示し、科学の統一を目指します。
統一思想研究院 小山田秀生・監修/大谷明史・著
第四章 創造神話と新創造論
(二)宇宙卵の神話
(6)フィンランドの卵神話
フィンランドの叙事詩「カレワラ」(Kalevala)の中に創造の物語がある(*9)。初めに、原始の海と空があった。空の娘イルマタル(Ilmatar)が海上を漂っていた時、一羽の小鴨が飛んできてイルマタルの膝に金の卵六つと鉄の卵一つを産んだ。イルマタルの膝から落ちた七つの卵は水中に落ち、風にゆられ、波にもまれて割れてしまった。割れた一つの卵の殻の下の部分は大地となり、上の部分は大空となり、白身は月と星となり、黄身は太陽となった。やがてイルマタルは、最初の人間であるバイナモイネン(Vainamoinen)を生んだ。
(7)韓国の卵生神話
東扶余(プヨ)の金蛙(キムファ)王の時代であった。王はある日、川のほとりで世にも美しい娘、柳花(ユファ)に出会った。柳花は天帝の孫を身ごもっていた。王が柳花を連れて王宮に戻ると、柳花が大きな卵を生んだ。やがて卵がかえり、なかからひとりの男の子が現れた。男の子は朱蒙(チュモン)と呼ばれるようになった。
やがて朱蒙の才を恐れた金蛙王の王子たちから生命をねらわれるようになり、朱蒙は逃亡した。朱蒙一行は淹水(オス)に至り、追い詰められたが、魚とすっぽんが一列になって橋を作り、無事に川を渡った。朱蒙は南下して高句麗を興し、高句麗の始祖となった。朱蒙は東明王と称された。朱蒙(東明王)の子、温祚(オンジョ)が百済を興した。したがって百済は高句麗の弟国のような形になる。
新羅の始祖となった朴赫居世(パクヒョコセ)も卵から生まれたという。現在の慶州を拠点としていた斯盧(サロ)国の六村の村長が、ある時、「君主をお遣わしください」と天帝に祈願した。すると一条の光が天地を照らした。そこには一頭の白馬が紫色に輝く大卵の前で跪(ひざまず)いていた。その卵から生まれたのが朴赫居世であり、彼は新羅の王となった。新羅の第四代の王、脱解(タレ)も船にのせられて流された卵から生まれたという。加羅(カラ/伽耶〈カヤ〉)の王となった首露(スロ)も、天から降りてきた黄金色の六つの卵のなかの一つから生まれたといわれている。このように、韓国では卵から国の始祖が生まれたという神話が多く伝えられているのである。
(8)日本の神話
『日本書紀』には、天地は鶏の卵のような状態から生まれたと次のように記されている。
昔、天と地がまだ分かれず、陰陽の別もまだ生じなかったとき、鶏の卵の中身のように固まっていなかった中に、ほの暗くぼんやりと何かが芽生えを含んでいた。やがてその澄んで明らかなものは、のぼりたなびいて天となり、重く濁ったものは、下を覆(おお)い滞(とどこお)って大地となった。澄んで明らかなものは、一つにまとまりやすかったが、重く濁ったものが固まるのには時間がかかった。だから天がまずでき上がって、大地はそのあとでできた。そしてあとから、その中に神がお生まれになった(*10)。
(9)現代の宇宙卵理論——ビッグバン理論——
現代科学の宇宙観によれば、今から138億年前に、宇宙は一点の爆発から生まれ、急激な膨張(インフレーション)に続いて大爆発(ビッグバン)が起きて、急速に広がっていった。そこから素粒子、原子、天体が生まれ、現在のような広大な宇宙になったというのである。これは宇宙卵が爆発的に孵化したものと見ることができよう。現代の宇宙卵といえるビッグバンを図4-8に示す。
(10)宇宙卵と新創造論
新創造論によれば、神は初めにロゴス(言〈ことば〉)を形成され、次にロゴスに従って被造世界を創造された。ロゴスとは、被造世界に対する神の構想または設計図であるが、ロゴスの形成においては、人間の構想をモデルにして、高級な生物→低級な生物→天体→原子→素粒子→光というように、下向的に構想がなされた。ところが被造世界の創造においては、その逆に、光から始まり、人間を目指していったのである。したがって宇宙は光に相当するビッグバンから始まり、人間の住み家としての地球を形成し、やがて人間が誕生するようになっていた。神話においては、それを宇宙卵が割れて宇宙と人間が出てきたと、とらえていたのである。
宇宙卵の中にはロゴスが宿っていた。そしてロゴスに導かれて世界が創造されたのであった。ロゴスすなわち神の構想は、人間(アダム・エバ)を目標とするものであり、人間が現れる前に、人間の生活環境としての万物を準備するものであった。つまり宇宙卵の中に人間と万物の構想が入っていたのである。したがって卵が割れて、その中から天と地、人間、動物、植物が一度にぞろぞろと飛び出してきたのではない。宇宙卵の中に入っていた構想にしたがって、光→素粒子→原子→天体→低級な生物→高級な生物→人間という順序で、時間をかけながら、被造世界は形成されてきたのである。ところが神話の世界では、時間を省略して、すべてのものが一時に出てきたように描いているのである。したがって時間性を補って見れば、卵神話も、単なるおとぎ話ではなく、科学時代の今日でも、受け入れることができるのである。
このように、神の構想(ロゴス)に従いながら、ビッグバンから始まった創造を、古代の神話は宇宙卵の孵化としてとらえたのであった。ロゴスに従い、ビッグバンから始まった創造を図4-9に示す。
*9 D・A・リーミング、M・A・リーミング、松浦俊輔他訳『創造神話の事典』青土社、1998年、290頁。
*10 宇治谷孟訳『日本書紀』上巻、講談社、1988年、15頁。
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次回は、「男女神の交合による天地創造」をお届けします。