2024.01.12 22:00
愛の知恵袋 182
旧交を温めよう
松本 雄司(家庭問題トータルカウンセラー)
岡山から思いがけない友人が来訪
2023年の秋は私にとって思い出深く嬉しい季節であった。遠方から相次いで古い友人が訪ねて来てくれたからである。
まず10月中旬に岡山県から一人の婦人が訪ねて来てくれた。彼女は若い頃、共にボランティア活動をした仲間で、カトリック系ミッション大学の出身だった。
「小倉に用事があるので、ついでに大分まで足を延ばしたい。久しぶりに話もしたいし大分のキリシタン史跡にも触れてみたい」という連絡が来たので快諾した。
大分駅で出迎え、まず駅前のザビエル像と大友宗麟像を見て、県庁前のキリスト教関係の彫像を見た後、キリシタン殉教記念公園に案内した。そのあとは昼食をとりながら様々な思い出話をした。「大分のカトリック教会を訪ねて帰りたい」というので、そこに案内して別れを告げたが、昔と同じ穏やかで人への情の厚い人だ。
沖縄からも懐かしい友人夫婦が
11月上旬には沖縄から懐かしい友人が夫婦で訪ねて来てくれた。私も2日間時間をとって大分県の名所などを案内し、また、心ゆくまで話をした。
彼らは面白いカップルで、妻は沖縄県出身なのだが、夫の故郷は北海道だった。
驚いたことに、夫の故郷の北海道に行って縁故の人達と会ったあと、そこから車で九州まで日本縦断の旅をして、各所で旧知の友人たちと会い、その途上で私に会いに来てくれたのだった。おそらく、人生のまとめをしようとしているのだろう。
最初の日は、ファミレスで私の家族と一緒に夕食をしながら話に花を咲かせた。
2日目は、午前中に大分市内のキリシタン史跡を案内し、そのまま、別府市に足を延ばしてビーコンプラザの大展望台からの眺望を楽しんでもらった後、別府名物“地獄めぐり”を案内し、昼食の後、また時間をとってじっくりと話をした。
「これから鹿児島に行って、そこで知人に会ってからフェリーで沖縄に帰る」というので、夕暮れの中、二人を見送った。彼らも50年来の大切な友人である。
“朋あり遠方より来たる、また楽しからずや”
その後、岡山県に住む別の友人から連絡があり、「是非、会って様々な事を相談し、意見を聞きたい」ということだった。11月の下旬だったが、1泊2日の時間をとって来てくれたので、多くのことをじっくりと話し合うことができた。
彼は若い時から純朴で、「どう生きるか」ということに真剣だった。私に会ったら聞きたいと思っていたことを10項目以上も準備していて、次々に質問してきた。
思い出話をしたあとは、家庭のこと、仕事のこと、今の世相のこと、国際情勢のこと…そして、これからどう生きるべきか…など、あらゆることについての相談だったので、私も思うところを虚心坦懐に話した。
大分駅で見送って家に帰り着いたら、「いま、帰りの新幹線の中です」というLINEメッセージが来ていた。「今回、会いに行って本当に良かった。次は、観光もかねて妻と一緒に行きたいと思います」とのことだったので、「大歓迎です。ぜひ、また来てください」と返信を送った。
まさしく、「朋あり遠方より来たる、また楽しからずや」と述懐した孔子の言葉をかみしめることの出来た秋であった。
旧交を温めて、人生の実りを刈り入れよう
私たちの人生は長いようで短い。残った時間を如何に過ごすか、よくよく考えて、悔いのないように整理してから、次の世界に向かいたいものである。
第一に考えなければならないのは、家族の関係の見直しだ。
夫婦としての情の絆がまだ不十分だと感じるならば、今一度、夫と妻としてじっくり向きあって、その絆を深めたい。
また、子供に対しても、多忙のあまり十分に向かい合ってやれなかったという後悔があるならば、これからでも穴埋めをするつもりで情を注いであげよう。
そして、孫たちのためにも、できる限りの有形無形の愛情を注いでやりたい。
第二に大切なことは、友人知人との関係の温め直しだ。
今までの人生の中で縁のあった多くの友人・知人がいる。親戚や幼友達、学校の同窓生や先輩・後輩、仕事の同僚、趣味や諸活動での仲間達……。
思い出せば、自分の人生はなんと多くの人との出会いによって支えられてきたのだろうか…そう思うと、本当に感慨深い。
カレーライスは再加熱したらもっとおいしくなるというが、人間関係もそうだ。
とりわけ、同じ志を持って、苦労を共にしてきた朋友は宝物のような存在だ。そんな懐かしい旧友に久々に連絡を取ってみたり、訪問したり招いたりして、交流を復活させてみよう。旧交を温めると、前にも増してその心情関係が深まっていく。
それはこの地上人生を豊かにするだけでなく、次の世界にも連結される貴い宝になるに違いない。