2023.12.31 22:00
ダーウィニズムを超えて 39
アプリで読む光言社書籍シリーズとして「ダーウィニズムを超えて」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
生物学にとどまらず、社会問題、政治問題などさまざまな分野に大きな影響を与えてきた進化論。現代の自然科学も、神の創造や目的論を排除することによって混迷を深めています。
そんな科学時代に新しい神観を提示し、科学の統一を目指します。
統一思想研究院 小山田秀生・監修/大谷明史・著
第四章 創造神話と新創造論
人類は古来、数多くの神話を生み出してきた。そこには「天地はどのように創造されたか」という、世界の始まりに対する興味深い物語がある。さらにユダヤ・キリスト教の創世記をはじめ、世界の諸宗教においても、天地創造の記述がある。
これらの神話や宗教の天地創造の物語は、科学時代の今日、荒唐無稽(こうとうむけい)なものと考えられたり、単なるおとぎ話にすぎないと見られる場合が多い。しかし統一思想の新創造論の観点から、これらの創造神話を解釈すれば、決して荒唐無稽なものでなく、またおとぎ話でもないことが明らかになる。すなわち新創造論を通じて、創造神話を現代に生かすことができるのである。
(一)原人神話
原初に原人(または原初の神)が存在し、原人が死んで、あるいは生贄(いけにえ)になり、その身体から人間、動物、植物、天と地が生じたという神話が世界各地に見られる。その中で代表的なものを挙げてみよう。
(1)巨人プルシャ(古代インド)
リトルトン(C. Scott Littleton)編の『神話』は、インドの巨人プルシャ(Purusha)の神話を次のように説明している(*1)。
インドの古代の賛歌『リグ・ヴェーダ』(Rig Veda)によれば、神々は巨大な原人プルシャ(図4-1)を生贄として、その身体から世界を造ったという。プルシャの身体がばらばらにされて、頭から天、足から地、へそから大気、耳から方位が生じた。心臓から月、目から太陽、口から神々の王であるインドラ神(Indra)と、火の神であるアグニ神(Agni)、呼吸から風の神ヴェーユ(Vayu)が生じた。人間の四つの階級もプルシャから生じた。すなわち、プルシャの口からバラモン(祭司階級)、両腕からクシャトリア(王族、戦士階級)、両腿(もも)からヴァイシャ(農民と職人の庶民階級)、両足からシュードラ(奴隷階級)が生じたのであった。
(2)巨人盤古(古代中国)
天と地ができる以前は、混沌(こんとん)としたモヤのような状態であった。その混沌の中から盤古(図4-2)が生まれた。盤古はどんどん成長して巨人になったが、やがて死を迎えた。死んだ盤古は万物の元になった。その息は風となり、声は雷に、左の眼は太陽に、右の眼は月になった。髪や髭(ひげ)は星となり、汗は雨になった。手足は地の四本の柱となり、体は五つの名山となった。血は川に、肉は土に、皮や毛は草木に、歯や骨は金属や石になった。精液と骨髄は真珠と翡翠(ひすい)になった。そして身体に寄生していた虫たちが人間になったという(*2)。
(3)巨人イミル(北欧神話)
巨人イミル(Ymir)は世界最古の存在であり、神々とこれに敵対する巨人一族との共通の祖先だったとされている。彼はオーディン(Odin)、ヴィリ(Vili)、ヴェ(Ve)という三柱の兄弟の神によって殺され、三神はイミルの死体から世界を造った。イミルの身体の肉は大地となり、血は海となり、骨は岩となり、歯と砕けた骨は石や砂になり、髪の毛は樹木となった。頭蓋骨は空となって、大地の上に置かれた。そして脳髄は空の雲になったという(*3)。
(4)原初の女神ティアマト(バビロニア)
救世主とされる太陽の子、マルドゥク神(Marduk)は塩水の海の女神ティアマト(Tiamat)を殺して、彼女を二つに裂いた。そしてティアマトの身体の上半分から星を伴った天空が造られ、下半分から植物と動物を備えた大地が造られた。ティアマトの唾液から雨雲が造られ、目からティグリス、ユーフラテス川が造られ、胸から山脈が造られ、山から清水が流れ落ちた。ティアマト軍の司令官であったキング(Qingu)は捕らわれの身となったが、やがて殺されて、その血から人間が造られたという。
(5)イザナギの神(日本神話)
イザナギとイザナミの男女神は夫婦の交わりによって八つの島からなる日本列島を生んだ。ついで山の神、海の神、岩、土、木、風、五穀などの数多くの神々を生んだが、最後に火の神を生んだとき、イザナミは陰部を焼かれて死に、黄泉(よみ)の国へ下った。黄泉の国へ妻をたずねて行ったイザナギが、「入ってはならない」といわれた部屋に入ってみると、そこには全身にうじの湧いた醜い妻の身体があった。イザナギはあわてて逃げ出した。イザナギが黄泉の国から逃げ帰り、みそぎをした時、彼の左の眼から太陽神のアマテラスが、右の眼から月神のツキヨミが、鼻からは暴風神的性格が著しいスサノオが生まれた。この神話は原人から世界が生じたという神話の変形したものであるといえよう。
(6)原人神話と新創造論
原人神話によれば、原初に原人(あるいは原初の神)が存在し、その原人や原初の神が死んで、あるいは生贄となり、その身体から、天と地、万物と人間が生じたという。しかし、これは象徴的な物語と見るべきである。
新創造論によれば、神は初めに人間始祖(アダム・エバ)の構想を立てられ、その構想をモデルにして、人類、動物、植物、鉱物、天体を構想されたのである。したがって原人とは、万物の原型となった人間始祖を意味していると見ることができる。実際に原人の体がばらばらにされたのではなく、原人として表現されている人間始祖の姿(構想、設計図)を見本として、それを捨象し、変形しながら、人類と万物を構想されたという意味に理解できる。したがって、原人の体からの創造神話は新創造論に通じていると言えよう。人間始祖アダム・エバの構想に基づいて万物が構想されたことを図4-3に示す。
*1 C. Scott Littleton, general editor, Mythology (San Diego: Thunder Bay Press, 2002), 330-331.
*2 Ibid, 392-395.
*3 Ibid, 278.
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次回は、「宇宙卵の神話①」をお届けします。