終活ポイント講座 14

 『祝福家庭』(2020年春季号、夏季号、秋季号)に掲載された「終活ポイント講座」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
 「老後」と「聖和」に対する備えに関して、行政書士の石原登文先生(6000双)に解説していただいています。

※法律や制度は2020年9月時点のもので、今後、変わることがあります。

17 費用の工面と遺影について
 葬儀や埋葬には、ある程度の費用がかかります。聖和に向けた準備の中で、どのように費用を工面すべきか検討する必要があると思います。

 少額短期保険の中に、もっぱら葬儀代に充てるため利用されている保険があります。年齢に応じて変わりますが、掛け金が安く、掛け捨ての保険で、契約者が死亡した際に一定の保険金が支払われます。

 またAPTFでは、加入期間に応じて「聖和見舞金」が支給されます(2023年現在)。

 さらに、故人が会社員で健康保険に加入していたり、自営業でも国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入していたりした場合、喪主に対して多少のお金が支給されます。請求期限は2年のため、健康保険の資格喪失届を提出する際、一緒に手続きされるとよいでしょう。

 葬儀のとき祭壇に飾る写真のことを、遺影といいます。以前は白黒で無表情のものが多かったのですが、最近の遺影はカラーで明るく、表情も笑顔のものを選んだりと、変化しています。実際に家族の葬儀を経験することで、自分の遺影はあらかじめ準備しておきたいと考える人が多くなったためです。

 葬儀が終わったあとは、遺影をそのまま部屋に飾ることも多いので、新たに撮影するなど、自分がいちばん気に入った写真を準備するのがよいと思います。

 遺影用の写真を準備したら、それをどこに保管するかという問題があります。エンディングノートの場合は、大体、後ろのページに遺影を貼り付けるスペースが設けられています。

 デジタルデータで残すのであれば、家族が共通に閲覧できる場所に保存する必要があります。個人使用のパソコンの場合は、パスワードが分からなくてデータが取り出せないこともあるので、注意が必要です。

 埋葬にまつわる制度は今後変更されることもありえますが、いずれにしても、法律の範囲内であれば、遺族は故人の葬儀をどのような方法で行ってもよいことになっています。

 霊界に旅立つに当たり、聖和式で見送ってほしいと希望される場合は、それなりの準備が必要です。家族や親族に自分の価値観をよく説明し、理解者を得る努力が大切なのです。

 聖和に向け課題を整理し、葬儀や埋葬の費用まで手当てしておけば、生前の希望はある程度かなえられるはずです。


▲全日本聖和祝祭(2019年、尾瀬霊園)

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 これまで6年間にわたり、60以上の教会で終活セミナーの講師を担当してきました。その中で自分自身も、「地上生活は1回しかない」「人生は誰のものでもなく、自分の人生である」ことを、しみじみと感じてきました。

 生きていれば理不尽な出来事が起きたり、できれば避けたい不幸に巻き込まれたりすることがよくあります。しかし、それを他の誰かに責任転嫁することはできません。またそのような生き方はしたくないとも思うのです。

 地上生活は、終焉(しゅうえん)を迎える時が必ずやってきます。終活の本質は、まさに人生の終焉と向き合うことを通して、悔いのない生き方をすることであると思います。

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 「終活ポイント講座」は、今回が最終回です。ご愛読ありがとうございました。