世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

安倍晋三首相、総裁選出馬表明と「燃ゆる思い」

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 8月20日から26日を振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。
 エルサルバドル、台湾との断交発表(8月20日)。トランプ大統領、対中関税制裁第2弾発動(23日)。トランプ氏、ポンペオ国務長官の訪朝中止を表明(24日)。安倍首相、総裁選出馬正式表明(26日)。米上院議員マケイン氏、死去(26日)、などです。

 今回は、自由民主党総裁選を扱います。安倍晋三首相は8月26日、総裁選出馬を正式に表明しました。総裁選挙の日程はすでに決まっており、9月7日告示で20日開票となっています。
 すでに石破茂氏が10日に出馬表明をしています。安倍氏、石破氏の一騎打ちとなるでしょう。

 総裁公選規程の改正によって、今回から国会議員票一人一票の405票、党員票も同数の405票(前回12年までは300票)、計810票の行方で決することになります。党員票の比重が増し、地方の意向を反映しやすくしています。

 安倍氏は出馬表明を鹿児島県垂水(たるみず)市で行いました。「あと3年、自民党総裁として首相として、日本の舵取りを担う決意だ」と述べました。記者団に向かう安倍氏の後ろには、桜島の雄大な姿がありました。

 桜島といえば、すぐに一つの歌が心に響きます。
 「わが胸の 燃ゆる思いにくらぶれば 煙はうすし 桜島山」です。

 三橋美智也の演歌「田原坂」の中でも、吟じられる短歌ですが、西南戦争がテーマになっているので、すっかり西郷隆盛の歌と思っていましたが、違うようです。
 海音寺潮五郎の『西郷と大久保』(新潮文庫、1973年6月)には、幕末期の福岡藩藩士の平野国臣が鹿児島城下に入ろうとして許されず、伊集院でこの歌を詠(よ)んだらしいということが紹介されていました。

 しかし、桜島を背負う舞台での出馬表明は、その「燃ゆる思い」を伝えるために十分な演出だったと思います。(ご本人の思いを確認したわけではありませんが)安倍氏にとってのそれは、「憲法改正」と「北朝鮮による拉致問題の解決」です。
 4月の日米首脳会談で安倍氏は、「拉致問題の解決なくして政治生命を終えられない」と訴え、トランプ氏と同席していたメラニア夫人が心を動かされたと述べています。

 8月22日、日米首脳電話会談が開かれました。テーマは北朝鮮の非核化と拉致問題です。その二日後24日、トランプ氏はポンペオ国務長官の訪朝中止を表明しました。この電話会談はトランプ氏の要請で行われています。安倍氏への信頼の表れです。安倍氏はトランプ氏のみならず、習近平主席、プーチン大統領などに大きな影響を与えています。

 来年、わが国は、皇位継承、G20(主要20カ国・地域)首脳会談など重要な行事があり、統一地方選挙、参議院選挙(12年に一度重なる)もあります。再来年は東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。

 安倍氏以上の存在はいない、というのが結論です。