2023.11.21 12:00
平和の大道 60
経験知と国際ハイウェイ実現
皆さんは、『平和の大道』という書籍をご存じでしょうか。著者は、一般財団法人国際ハイウェイ財団の理事長、佐藤博文氏です。
同書は、国際ハイウェイ財団が推進する「国際ハイウェイ・日韓トンネル」プロジェクトの意義や背景などについて総合的に理解することのできる貴重な一冊です。
Blessed Lifeではその一部を抜粋して紹介してまいります。ぜひお楽しみに!
佐藤 博文・著
60回となる今回は、一つの区切りとして、「効果性」についての検討はひとまず置いて、国際ハイウェイ実現のための基本的な心構え、思考のあり方について考察する。
よく「できるか、できないか」という質問を受ける。結局は、必要性、可能性、効果性等の実現のための客観的な基本的要素を踏まえることは大前提であるが、問題は精神面のプラスアルファーがあるかどうかである。
歴史的な大事業というものは、たとえ客観的な実現要素が整ったとしてもできるものではない。何事であれ、結局、事を成就するのは人の意志であり、担当者の心構えである。
つまり、理想と現実を結びつけることを可能とする発想法(理念、ビジョン、戦略)と強い意志力があるかどうかという「なすのか、なさないのか」という意思決定と選択の問題に帰着する。というのは、現実は、理想実現を阻む予測できない不確定要素があまりにも多いため、計画通りに事が運ばないからである。
現実の課題を克服し、理想を実現することを可能にする精神を紹介する。なぜなら、この精神は客観情勢以上に国際ハイウェイ実現に不可欠であると考えるからである。
フロネシス
ギリシャの哲学者アリストテレスは、『ニコマコス倫理学』の中で、リーダーに必要な知恵として、「フロネシス(賢慮、実践的知恵)」を唱えている。フロネシスとは、理想・共通善を求めつつ、現実の中で関係性と文脈を見極めながら適時適切な判断ができる身体性を持った「実践知」のことを言う。
リーダーには、客観分析や情報処理で得られる決定(デシジョン)よりも、主観(価値観)と客観を総合し、その時々の文脈を広く、深く洞察した上で判断(ジャッジ)する賢慮が求められる。
フロネシスの育成には、まず、高質な経験、マニュアルにはない極限体験や失敗体験のほか、手本となる人と体験を共有することが必要である。もう一つは、哲学、歴史、文学、芸術等の教養である。教養とは、「人間とは何か?」を本質的に問うことである。これが事象の背後にある関係性・文脈を読む基礎になる。
経験は「暗黙知」、教養は「形式知」だが、暗黙知も言語化すると形式知となる。経験を言語化することで、文脈の背後にある関係性を広く、深く洞察する力がつき、質的に高い判断力が養成される。
一番のポイントは、現実との接点、つまり経験を生命視することだ。現実の中に身を投じて、そこで実体験した「身体知(感性、勘、知恵)」は、知識や理論を学習すること以上に重要である。これは「経験知」とも言うことができる。経験知は言葉にすることが難しく、実体験しないと分からず、感性や勘に属する領域である。しかし、その方が言語で学習することが可能な知識や理論の学習よりも貴重である。
特に、為政者や大きな仕事をするリーダーの基本的な資質としてこのフロネシスが求められる。情報過多の現代社会では、教科書やマニュアルで学習することに慣れ、現場に身を投じて直接現実に接するということが少なく、自らの目で現実を直視し、自らの頭で考えて決断することが弱く、いわゆる「体で覚える」という経験知・身体知の世界が軽視されている。
しかし、国際ハイウェイ建設のような未来創造の世界では、教科書もマニュアルもなく、実際やってみなければ分からないことが多く、「経験知」の占める領域が主流である。
国際ハイウェイ財団は、国際ハイウェイ・日韓トンネル・ベーリング海峡トンネルの実現のため、1981年に文鮮明(ムン・ソンミョン)総裁が提唱して以来、他に誰も実行する者がいない中で、研究し、国際会議や大会を開き、用地を買い、土地を測量し、海底を調査し、実験のための調査斜坑を掘り続けてきた35年間にわたる他の追随を許さない経験、つまり「経験知」の蓄積がある。
経験知の重要性
イノベーションや未来創造の世界では、実体験・経験から得られる「閃き、感性、勘」等の「経験知」こそ、貴重な財産であり、最も大きな資本である。誰もやったことのない分野に挑戦するので、前もって学習する訳にはいかない。既存の知識や理論は通用しないばかりか、かえって邪魔になることも多い。
挑戦し、実践した者だけが体験し、感じる世界である。いわゆる「リスク」は危険としてではなく、「未来への投資」と解すべきだ。失敗は経験知となり、多く失敗をすればするほど、経験知という財産・資本が増えていくと考える。
故に、未来創造の分野では、理想や目標に向かって失敗を恐れずに果敢に挑戦し、多くの失敗を重ねながら「経験知」を積み重ね、実現するまでやり続ける以外に成功への道はない。したがって、「意志あるところに道あり」というシンプルな結論になる。国際ハイウェイ財団も、国際ハイウェイ・日韓トンネル・ベーリング海峡トンネル実現のため、このような道、精神を貫いて前進していく所存である。
(『友情新聞』2016年6月1日号より)
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次回は、「北東アジア共同体形成」をお届けします。
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