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脱会説得の宗教的背景 11
新約聖書の霊感説に対して深刻な波紋を投げかけた問題とは

教理研究院院長
太田 朝久

 YouTubeチャンネル「我々の視点」で公開中のシリーズ、「脱会説得の宗教的背景/世界平和を構築する『統一原理』~比較宗教の観点から~」のテキスト版を毎週火曜日配信(予定)でお届けします。
 講師は、世界平和統一家庭連合教理研究院院長の太田朝久(ともひさ)氏です。動画版も併せてご活用ください。

共観福音書問題について
 イエス伝研究は、共観福音書(マタイ伝、マルコ伝、ルカ伝)で研究していくようになりましたが、そこに「共観福音書問題」が起こってきました。

 三つの福音書には似た話の内容が書かれており、これを並行記事といいます。
 共観福音書は、同じ資料に基づいて書かれていると推測されます。

 マタイ伝、マルコ伝、ルカ伝を比較対照すると、マルコ伝の内容は、約9割がマタイ伝にも含まれ、ルカ伝にも半分以上が含まれます。
 それで、マルコ伝が共観福音書の元となる資料だと推定され、これを「マルコ先行説」と呼びます。

 マルコ伝は、AD65年から68年ごろに成立したと考えられています。
 残るマタイ伝とルカ伝を比較すると共通した資料があり、それが“イエスの言葉”“説話”です。
 マタイ伝とルカ伝の共通した資料「語録集」があるのではないかとのことで、ドイツ語の資料(Quelle=クヴェレ)の頭文字を取って「Q資料」と呼びました。

 マタイ伝は、マルコ伝の枠組みを用い、そこに「山上の垂訓」などの教訓や“イエスの言葉”を盛り込んで編集したと考えられます。
 ルカ伝も、マルコ伝と共通する資料は、話の順序がほぼ同じです。マルコ伝が基本となり、マタイ伝やルカ伝が編さんされたと推定されるのです。

 ところが三つの福音書を比較すると、矛盾と思われる内容があります。
 それが「共観福音書問題」です。旧態依然の“福音書は誤りなき啓示の書”という単純な話ではなくなりました。
 聖書批評学による「共観福音書問題」は、新約聖書の霊感説に対して深刻な波紋を投げかけています。

(続く)

※動画版「脱会説得の宗教的背景 第4回『リベラル』と『福音派』との和合(新約聖書学)」はこちらから