2023.10.28 12:00
神様はいつも見ている 28
~小説・K氏の心霊体験記~
徳永 誠
小説・K氏の心霊体験記「神様はいつも見ている」を毎週土曜日配信(予定)でお届けします。
世界平和統一家庭連合の教会員、K氏の心霊体験を小説化したものです。一部事実に基づいていますが、フィクションとしてお楽しみください。同小説は、主人公K氏の一人称で描かれています。
第4部 霊界からのメッセージ
4.「清平っていい所だぞ」
36万双の祝福結婚式に参加した翌年、義父は地上での闘病生活を終えて霊界へと旅立った。
私たち夫婦は義父を統一教会(現・家庭連合)の葬式で送ってあげたいと考えていた。
統一教会では、一般的に通夜に当たる儀式を「帰歓式」と呼び、葬儀や告別式に当たる式を「昇華式」と呼んだ。現在は、昇華式を聖和式と呼んでいる。
妻の実家に着いて葬式の件を相談すると、妻の二人の弟は何も言わなかったが、弟の嫁たちは反対の意思をあらわにした。
「お兄さん…、お兄さんたちを見ると、そうは思わないんだけれど…、世間体がねえ…。ちょっと、教会式の葬式は…」
「何や、どういうことや」
「親戚や近所の人もたくさん集まるし、もし隣近所に知られたら、娘が嫁に行けなくなってしまうと思うのよ…。だから統一教会のことは内緒にしてくださいね」
私はあきれてしまった。
というのも、結婚できなくなるという弟夫婦の娘は、この時まだ1歳の幼児だったからだ。
普通に考えれば20年も先の話ではないか。それを1歳の娘の将来の結婚話を盾に、統一教会の葬式は嫌だと強硬に主張しているのだ。
このようなやりとりに象徴されるように、統一教会に対する当時のマスコミの偏向報道の影響はひどかったのである。
弟の嫁たちがあまりにかたくなだったので、仕方なく、統一教会の葬式は略式で近親者のみで行い、その後の仏式では親戚や地域の人を集めて行うことにした。
私は祝福を受けた義父に申し訳ないと思いながら祈祷した。
すると、それを待っていたかのように、義父が私の母を通して出てきたのである。
「祈ってもらって楽になった」
義父の声が響く。
「死んでからよく分かったが、あんたに祈ってもらうと、真っ暗な中に光の道ができたように、本当に楽になる。ありがとうな」
「お父さん、祝福は受けたけど、まだ祝福の意義やら、伝えなければならないことがぎょうさんある、ちょっと待っておいてね」
「分かった」
私は、統一教会の教義の中心である統一原理の内容を義父に伝えられていなかったことが気になっていた。霊前で講義をしようと考えていたのだが、葬式の準備が忙しく、その時間がなかなか取れないでいた。
私は考えあぐねた末に、親族に見られても構わないから、通夜の時に講義をしようと決めた。
もう自分の父親の時のような後悔はしたくなかった。
集まった親族のほとんどは九州の人たちだった。酒好きの親戚たちは、故人をしのんで徹夜で飲み明かすという。
「わしらのことはいいから、あんたたちで好きにやったらいい」
持ち寄った焼酎を酌み交わしながら、怒鳴り声やら笑い声やら入り混じるにぎやかな夜となった。
夜中の2時、親戚の人たちがいる中で、私は統一原理の講義をするためにホワイトボードを持ち出した。
私には義父が見えていたが、他の人から見れば、誰もいない空間に向かって私が独り言をしゃべっている格好になる。
2時間の講義の間は、霊界から降りてきている義父の他にも、地上の義母や義弟にも座ってもらった。
酒席の方でも私の講義が気になるのか、こちらをチラチラ見ている人もいる。
私は思い残すことがないよう、ひととおりの統一教会の教義を義父に伝えることに集中した。
私は最後に、義父に念押しした。
「霊界で祝福を受けたかと聞かれたら、『1995年8月に36万双で受けました』と答えてくださいね。分かりましたか?」
「ああ。『36万双を受けた』と言えばいいんだな」
「そうそう。絶対忘れたらあかんよ」
そんなやりとりをしていると、そばで酒を飲みながら講義を聞いていた親戚の人たちが話しかけてきた。
「あんたの話、よく分かったよ」
霊界の義父に語った講義だったが、どうやら地上の親戚たちの耳にも届いていたらしい。
中には、「葬式のことはあんたに任せるわ」と言ってくれる人もいた。
後に、この親族たちも祝福を受けることになる。
葬儀の翌日、私は韓国の清平(チョンピョン)という所に行くことになっていた。
「清平」は地名だが、そこには統一教会の大規模な修練所施設があった。統一教会の教会員が「清平」と言うときには、修練所施設を指している。
私はその場で義父に清平に一緒に行こうと誘った。
普通の人に義父の姿は見えない。一緒に飛行機に乗っても周りの人には気付かれることはあるまい。
統一教会の祝福結婚式に参加した者は、天の祝福に対する感謝の思いを込めて献金を納めることが慣例になっている。
義理の両親の感謝献金は私たち夫婦が立て替えていたが、そのことについて私は妻に相談した。
「お母さんに感謝献金の話をしておいてね。お金がないなら仕方ないけど、あるなら自分でささげた方がいいと思うよ」
妻に相談したことを私はすっかり忘れていたが、韓国から帰国すると、妻はニコニコしながら私を迎えた。
「どうしたんや?」
「不思議なことがあったんや」
妻は私に感謝献金を見せた。
「これどうしたの?」
「お母さんの夢にお父さんが出てきたんだって」
妻の話によると、夢の中の義父は満面の笑みで「清平っていい所だぞ」と語ったという。
あまりにもその姿が楽しそうで、義母も一度清平に行ってみたいと思ったほどだった。
夢の中の義父は、「ところで、感謝献金はささげたのか?」と聞いてきた。
義父が言うには、霊界で祝福を受けたかどうか聞かれたので、私が教えたように、「祝福を受けた」と答えたところ、今度は「感謝献金はささげたのか?」と聞かれたというのだ。
私が祝福に対する感謝献金のことを義父に伝えていなかったので、義父は「知らない」と答えるしかなかった。
それで、「感謝献金は大事なことだから、もう一度地上に戻って聞いてきなさい」と言われた義父は、義母の夢の中に現れたのである。
義母は目が覚めた後、感謝献金のことを娘である私の妻に尋ねてきた。
妻が説明すると、すぐに義母は感謝献金を用意したのである。
霊界のスピードがあまりに速いことに私たちは驚いた。
義父の四十九日が終わってから、私は義母と一緒に清平を訪ねた。
私たちは清平の修練所施設の近くにある小高い山の上の天勝台聖地に登った。
眼下に広がる天心湖を見下ろした瞬間、義母は驚いて叫んだ。
「ここだよ、夢にお父さんが出てきて見せてくれた場所は!」
(続く)
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次回は、「13回忌にあいさつする父」をお届けします。