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コラム・週刊Blessed Life 285
人民武装部の設立を急ぐ中国の意図は何か

新海 一朗

 現在、習近平政権下で、奇妙なことが起きています。
 人民武装部(=民兵)の設立ということがラッシュとなっており、一体、何のためにそういう動きがあるのか、その意図がどこにあるのか、中国ウォッチャーたちの注目を集めています。

 9月28日、上海城投集団(都市建設投資集団)が人民武装部を設立・発足させたことがニュースになりました。

 その背景にあるのは、不動産バブルの崩壊に伴う債権取り立て騒乱やさまざまな暴動に対処するための措置であると解説する人々もいます。

 しかし不動産と関係のない国有企業でも、人民武装部を設立する動きが活発化しているので、何か他に大きな目的があるのではないかと考えられます。

 今年4月、広東省東莞市では、東莞交投集団、東莞能源集団など四つの国有企業で人民武装部を設立しています。
 8月には武漢農業集団、さらに昨年から各大学、政府機関にも人民武装部設立が相次ぐ事態となっています。

 この動きに対して、専門家たちは、地方党組織と解放軍の二重指導下で、民兵の組織化・運用・訓練を行う体制構築を、共産党政府は進めているのではないかと疑っています。

 ズバリ言えば、人民戦争(不平不満分子の人民を抑え込む戦争)に備えているという見方です。

 経済破綻で不満の広がった国内が大動乱状態に陥った時、対外戦争を担う人民解放軍が国内の鎮圧に当たるのではなく、今言った「人民武装部」が主として国内鎮圧に当たるというものであり、人民の騒乱を正規軍ではなく、人民(民兵)が人民の乱を抑え込むという考えのもとで、「人民武装部」が各企業、各大学、各政府機関に設立される状況が生まれているというわけです。

 このような国内統治の方法は、毛沢東時代にもあったと見ることができ、人民の内乱や騒乱を、人民(紅衛兵)を使って抑え込んだというのもその例です。

 武装警察の対応能力をはるかに超えた事態、すなわち、全国規模の大動乱の発生の可能性を、習近平主席は見越していると思われます。
 あくまでも、力で抑え込む体制の準備を急いでいると見られるのです。

 中国経済が危機的であるのは、105日、中国国際金融股分有限公司(中金)の「2023年中国財富報告」を見ても明らかです。
 中国の社会財富(国民資産)は790兆元(約1京6121兆円、日本は12445兆円)であり、そのうち、国が持つ資産は、360兆元、全体の45.6%を占めます。

 個人資産は430兆元、そのうち、総人口の0.33%(460万人)の富裕層は、290兆元の資産(1人当たり約12.5億円を持ち、中国の資産の36.7%が総人口の0.33%の人々に握られている計算となります。

 総人口の7.05%(9900万人)の中産階級は110兆元の資産(1人当たり2265万円)を有しています。
 しかし中産階級が7.05%しかいないということは、圧倒的な貧困階級が92.62%を占めるといういびつな格差社会になっているのです。

 約13億人で、残りの資産30兆元を分け合うということですから、1人当たり2.3万元(約47万円)となります。
 13億人がこの過酷な状況の中で暮らすとなれば、「天下大乱」の可能性を否定できなくなります。

 まさに、このことの故に、「人民武装部」の設置が各企業、各大学、各政府機関で急がれていると言っても過言ではありません。
 中国経済の格差は大きな火種になっています。