コラム・週刊Blessed Life 30
大国のプライド~プライドが邪魔して簡単にはいかない

新海 一朗(コラムニスト)

 大国は、当然のこと、世界の国々に大きな影響を及ぼす現実的な力を持っているわけですから、「プライド」を持っています。

 古代においてはローマ帝国、近代史になると大英帝国、現代史ではアメリカ。この三つは分かりやすい例です。隆盛を極めた時代とそれ以降の時代において、これら大国は過去の栄光を失っても、「プライド」だけは残っています。

 もう一つの流れで見ると、「全ての道はローマに通ず」といわれるように、イタリア半島の「ローマ」(第一のローマ)が一つのキーワードです。ローマ帝国は東西に分かれ、東ローマが首都をコンスタンティノポリスに移し、「第二のローマ」として自らを誇りました。
 コンスタンティノポリスはその後ビザンティウムに名前を変えます。ビザンティウムのギリシア正教が東欧のスラヴ諸族に広がっていく中で、モスクワ大公国のイヴァン三世が15世紀にロシアの統合を果たし、モスクワを「第三のローマ」として、世界帝国(古代ローマ帝国)の継承者たる「プライド」を示します。

 ソ連が崩壊したものの、帝政ロシアが復活するかたちで登場した現在のプーチン政権は、執拗に米国と対峙して、大国の誇りを取り戻そうとしています。その姿の背景には、モスクワを「第三のローマ」(世界帝国の首都)としたイヴァン三世のプライドが、プーチンの魂の中によみがえっているのではないかと感じられます。

 中国もまた、かつての唐、明、清などの大帝国の栄光を取り戻すという命題を至上のものとし、「米国何する者ぞ」という意気込みで大国意識をあらわにし、一歩も譲りません。

 このように、「プライド」を中心に現在の世界情勢を見ますと、大国の為政者、特に、最高指導者のプライドは、おそらく、好むと好まざるとにかかわらず、歴史的な背景を背負っており、自分でもどうしていいか分からない強力な精神的作用として、心の中に湧き起こってくるものと考えられます。

 現在の国際情勢は、主として、「米国のプライド(トランプ)」「ロシアのプライド(プーチン)」「中国のプライド(習近平)」が激しくぶつかり合っているものとして見てみると、まさに、これは「プライド合戦」と言えるでしょう。