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神様はいつも見ている 25
~小説・K氏の心霊体験記~

徳永 誠

 小説・K氏の心霊体験記「神様はいつも見ている」を毎週土曜日配信(予定)でお届けします。
 世界平和統一家庭連合の教会員、K氏の心霊体験を小説化したものです。一部事実に基づいていますが、フィクションとしてお楽しみください。同小説は、主人公K氏の一人称で描かれています。

第4部 霊界からのメッセージ
1. 父の死、父の人生

 19911016日、父が63歳で亡くなった。
 父は、私が5歳の時に交通事故に遭い、瀕死(ひんし)の重傷を負い、生命の危機に陥った。一時は医者も見放す状態だった。

 しかし霊界の助けによって奇跡的に一命を取り留めることができた。手足の不自由さは残ったものの、なんとか普通の人と同じように日常生活を送られるようになったのである。

 だが、元どおりに戻ったわけではない。完治には至らず、顔には至る所に手術の縫合による痕が残った。
 継ぎはぎの顔はブラック・ジャック(手塚治虫の漫画の主人公)のようでもあり、フランケンシュタインのようでもあった。

 幼い子供が父の顔を見たら、恐ろしさのあまり泣き出してしまうに違いない。
 小学生だった頃の私は、友達を父に会わせることはなかった。

 そんな顔の状態を一番気にしていたのは、父自身だった。
 31歳の働き盛りに事故に遭って以来、30数年間、父は継ぎはぎされた顔と付き合わなければならなかったのだ。
 私がその心境を痛感したのは、父の葬儀の時だった。

 私は父の遺影にふさわしい写真を探した。
 私は母に尋ねた。

 「最近のお父さんの写真はないの?」

 「事故に遭ってからは写真を撮ったことがないのよ」

 「どうして?」

 「お父さんがねえ、絶対嫌だと言うんよ。きれいな顔じゃないから、撮られとうないって」

 私は絶句した。

 「そうやったんだ」

 「でもね、整形手術できれいにすることも考えていた時期があるの」

 初めて聞いた話だった。
 事故から数年後の出来事だったという。

 「手術の日取りまで決まってたんよ」

 母の話によると、手術の前日、母に父を交通事故に遭わせた恨みの霊が入ったのだという。

 霊は母の口を通してこう言った。

 「整形手術をやるんならやってみろ。長男(私の兄)も同じ目に遭わせる!」

 なぜ、これほどまでに祟(たた)られなければならないのか。
 なぜ、先祖の罪を負わなければならないのか。
 理不尽さに憤りを感じたこともあった。

 「先祖が罪を犯したなら、その先祖に祟ればいい! 私たちは先祖の罪とは関係ない!」

 そう考えることもあった。

 私たちがどんな罪を犯したというのか。
 なぜ私たちだけがこんな目に遭わなければならないのか。

 統一教会に入会して統一原理を学び、霊界の事情というものを理解してみると、地上の罪は地上で償わなければそれが帳消しにならないのだということを知った。

 霊界の恨みの霊にとって、恨みを晴らす相手は、肉体を持った地上の子孫、すなわち父しかいなかったのだ。
 だから父が整形をすれば、兄をその代わりに立てて恨みを晴らそうとするのだ。

 「やった方は忘れても、やられた方は絶対忘れない」

 恨みの霊の言葉を聞いた父は思い悩み、整形手術をするべきかどうか苦しんだ。

 思い余って、父は兄に相談した。

 兄は、「俺のことは気にしないでいいから、手術を受けたらいいよ」と勧めた。
 だが、父は自分のような事故に兄が遭うのを恐れて、結局、手術を断念したのだ。

 そんな父の生涯を考えると、私は切ない気持ちになる。
 父は自分のやりたいこともできなかった。医者と縁が切れず、薬が手放せない生活を余儀なくされた日々の暮らしだった。

 父の幸不幸をどう評価すべきなのだろう。

 父の人生は、先祖の罪を背負って歩んだ、苦難の旅路だったのだ。

(続く)

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 次回は、「死んでからでは遅い」をお届けします。