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統一原理補講 12
メシヤ再降臨準備時代

ナビゲーター:佐野邦雄

 「統一原理補講」は、1993年7月から1994年8月にかけて、あの伝説のメディア『氏族教会FAX-NEWS』に掲載されたシリーズです
 執筆者は、原理講師として著名な佐野邦雄氏です。30年の時を超えてよみがえる原理学習ページ。統一原理学習の補助教材としてご活用ください。(一部修正加筆し、小見出しを付け、読みやすく改訂しました)

1)摂理的意義
 西洋史における近世400年(16C~19C)は、神の復帰摂理から見れば、メシヤ再降臨準備時代として、2000年前のイエスを迎えるまでのメシヤ降臨準備時代400年を実体的同時性で蕩減復帰する期間に当たります。

 神の摂理は本来、初臨のメシヤであるイエスを中心として完結するはずでしたから、すでにメシヤ降臨準備時代において地上天国成就のためのあらゆる準備がなされていたのです。

❶メシヤを迎えるための心霊的準備(信仰基台の復帰)として、エズラによるユダヤ教の刷新、予言者マラキらによるメシヤ思想(ヘブライズム)をはじめとして、ペルシャにはゾロアスター教、インドには仏教、中国には儒教が確立していました。

❷一方メシヤを迎えて完成すべき理想世界実現のための環境的準備(実体基台の復帰)としては、ギリシャの哲学・芸術・文学などヘレニズム文化が確立され、ローマ帝国を中心とする政治・法律・土木技術、地中海やシルクロードなどに発達した交通網、ギリシャ語を中心とする広範な文化的版図などが全てこの時代に備えられたものでした。

 このようにメシヤ降臨準備時代には、天国実現に向けて、宗教・哲学・法律・芸術・文学などの文化的諸領域の基本が形成されたのであり、その後の歴史はこれらを原点として発展してきたと見ることができます。
 カール・ヤスパースはこの期間を、著書『歴史の起源と目標』の中で、歴史の流れにおける「枢軸時代」と呼んでいます。

 さて、メシヤ再降臨準備時代は、イエスの十字架の死によって失われてしまったメシヤ降臨準備時代を取り戻すための期間でした。
 故にこの時代は、新たな教義や思想を生み出そうとするものではなく、すでに2000年前に備えられたものを再生、復興する運動という形で展開したのです。

2)宗教改革期(1517~1648)
 メシヤ再降臨準備時代の蘇生期は、ルネサンス(文芸復興)と宗教改革に始まり、それまでの中世社会の封建制度と教会体制の形骸化や腐敗により抑圧されていた人間の創造本性である自由や人格の自主性(人権)などを取り戻そうとする欲求から引き起こされたものでありました。
 そしてそれは2000年前のイエスの教え、つまり初期キリスト教精神に復帰して、改めて再臨のメシヤを迎えてみ旨を成就するための摂理として始まったものであるということができるのです。

❶ルネサンス(Renaissance)とは、フランス語で再生、復興を意味するもので、前述したギリシャ・ローマを中心とするメシヤ降臨のための環境を再整備するために、ヘレニズム復古運動として起こったものです。
 当初は文学・芸術・科学分野にギリシャ精神に見られる自由で個性的表現を求め、次いでその人本主義的思潮が中世社会に対する批判となり、やがて外的改革運動となって政治・経済・社会全般に及んでいったのです。

❷宗教改革(Reformation)は、宗教上の再生・復古運動(ヘブライズム復古)であり、再臨主を迎える心霊的準備のためにヨハン・フスやウィクリフに始まり、ルターやカルヴィンに至る宗教改革家を通して、イエス・キリストの教え、すなわち、聖書の教えそのものに帰るべきことが訴えられたものです。

 宗教改革の動機も、信教の自由や自主的活動を求める心であって、それは従来の法王(教皇)を頂点とするカトリックに対抗するプロテスタントの運動としてヨーロッパ各地に波及していきました。
 そして各国で政治や社会制度に対する革新運動に発展し、やがてヨーロッパ全域を巻き込む30年戦争となり、1648年のウェストファリア条約で新旧両教へ同等の権限が与えられる形で決着したのです。

3)宗教および思想の闘争期(1648~1789)
 メシヤ再降臨準備時代の長成期は、宗教改革期を近世の出発期(正分合作用の「正」に該当する)とすれば、分立期に当たるもので、覚醒された人間の創造本性から自由に信教や思想が生み出され、そこからさまざまな人生観や世界観が形成され、神学や哲学として体系づけられることによって教理論争や哲学上の争いへと発展していきました。
 このことから、この期間を闘争期ということもできます。

 さて、さまざまな思想上の論戦もこれを二つの大きな潮流として理解できます。
 第一はカイン型人生観であり、ルネサンスに端を発し人本主義の影響のもとに、価値判断の基準を人間自身の理性や経験に置き、それを主張することによって、人間を神から分離し、信仰的態度を軽視するような傾向として流れたのです。
 これはやがて神に連結された歴史や伝統を否定し、全てを合理的・現実的のみに判断し、神をも否定してしまう啓蒙思想を生み、無神論的唯物論を集大成するに至ったのです。

 第二はアベル型人生観であり、宗教改革を基とし、人間の価値判断や認識の根拠をどこまでも神に求め、神学面でも教理や形式よりも神との神秘的(霊的)交わりを追求していく人生観です。
 そしてその流れは、敬虔(けいけん)主義やメソジスト派、クェーカー派などに代表される熱烈な体験的信仰と布教活動へと発展していきました。

4)政治・経済および思想の成熟期(1789~1918)
 メシヤ再降臨準備時代の完成期は前期に形成された二つの人生観が、理想世界の実現を目指して、政治や経済そして社会に反映されてゆく期間で、これは再臨主を迎えて神の国が完成する準備段階の完成を意味し、これを成熟期といいます。

 神の国とは、この地上に神を父母として人類全てが兄弟姉妹として家族社会を構成するところの、共生共栄共義主義の国です。
 従ってその準備段階として、二つの人生観はその方法は異なっても、共に神の国実現のために支障となる専制君主体制や封建制社会を打倒し、新しい民主主義の社会をもたらそうとする革命を引き起こしたのです。

 カイン型人生観の影響によって、無神論と唯物論へ流れた啓蒙思想に染まっていった市民階級が絶対主義の矛盾に目覚め、旧体制に抵抗して起こした革命が1789年のフランス革命でした。これは革命勢力の性格からしても、非常に凄惨(せいさん)な流血事件となったのです。

 やがてここからカイン型民主主義が形成され、ドイツではマルクス主義、ロシアではレーニン主義として体系化されることにより、共産主義世界の形成に至るのです。
 これは唯物論に立脚した神なき理想世界を追求したということができます。

 一方、アベル型人生観に導かれ、イギリスで起こされた革命が1642年の清教徒革命、1688年の名誉革命で、やがてアベル型民主主義として新大陸アメリカに神を中心とする国家の建設を求める流れとなり、今日の自由民主主義世界を形成するようになったのです。

 このように、近世400年史は、アベル型・カイン型の二つの民主主義世界を形成して現代史(20世紀)に流れていくのですが、神の摂理は再臨主を迎えてアベル型民主主義世界が完全に一つとなってカイン型共産世界を吸収することによって完結するのです。そしてそれが次の現代史における中心課題であるといえるでしょう。



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