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ダーウィニズムを超えて 26

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「ダーウィニズムを超えて」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
 生物学にとどまらず、社会問題、政治問題などさまざまな分野に大きな影響を与えてきた進化論。現代の自然科学も、神の創造や目的論を排除することによって混迷を深めています。
 そんな科学時代に新しい神観を提示し、科学の統一を目指します。

統一思想研究院 小山田秀生・監修/大谷明史・著

(光言社・刊『ダーウィニズムを超えて科学の統一をめざして』〈2018520日初版発行〉より)

第二章 進化論を超えて─新たな展望

(三)人間の創造

(1)ヒトとチンパンジーのゲノムの差異

1. ヒトとチンパンジーのDNA配列
 DNA配列とタンパク質配列から導かれる分子データによれば、ヒトとチンパンジーがDNA配列の98.5パーセントを共有していることが明らかになっている。そしてヒトと最も近い類縁はチンパンジーであり、その共通祖先からヒトが分岐したのが約700万年前であるという。

2. ヒトをヒトにした特定の遺伝子はあるのか
 ヒトとチンパンジーの遺伝子はほとんど似ているのであるが、進化生物学者はヒトをヒトにした人間独自の遺伝子を探求しようとしている。

 ニューヨーク州立大学クイーンズバラ・コミュニティ・カレッジ生物学教授のユージン・E・ハリス(Eugene E. Harris)は、ゲノムスキャン研究によって、ヒトをヒトたらしめている未知の特徴を暴くことができるのではないかと言う(*46)。そして、「ゲノム時代の到来によって、ヒトは何者であってどのようにしてヒトになったのかという長年の疑問の答により近づくと同時に、地球上のほかの生物との進化的な結びつきの解明にもつながるだろう(*47)」と期待している。

 チンパンジーをヒトに進化せしめた遺伝子はFOXP2遺伝子かもしれないという説がある。エモリー大学の進化神経科学者のトッド・M・プロイス(Todd M. Preuss)は、次のように提唱している。

 FOXP2はきわめて特有の役割を果たしており、たとえば、一連の遺伝子を統制して、脳の発達を祖先のプログラムからヒトのプログラムへと切り替え、細胞や神経連結を、発話や言語を支えるシステムへと分化させているのかもしれない。さらには、肺や喉頭など、音声生成に関わるほかの解剖学的部位の発達も制御しているのかもしれない(*48)。

 けれどもFOXP2遺伝子が、ヒトをヒトにした特定の遺伝子なのか、実際は何もわかっていないのである。ジェリー・A・コインも次のように言う。

 ヒトをヒトにした特定の遺伝子については何もわかっていないのか? いまのところ、わかっていることは大してない。……ヒトの発話の出現に関わっていたかもしれない遺伝子(FOXP2)などが考えられるが、決定的な証拠はない。そして、これからもずっとそうかもしれない(*49)。


*46 ユージン・E・ハリス、水谷 淳訳『ゲノム革命』早川書房、2016年、146頁。
*47 同上、183頁。
*48 同上、177頁。
*49 ジェリー・A・コイン、塩原通緖訳『進化のなぜを解明する』日経BP社、2010年、36566

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 次回は、「痕跡器官、偽遺伝子、相似性は進化の証拠か」をお届けします。


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