青少年事情と教育を考える 242
「こども大綱」は「こども家庭大綱」に

ナビゲーター:中田 孝誠

 前回は、政府が新しく導入する予定の施策「こども誰でも通園制度」を取り上げました。
 今回も、子供に関する施策から考えてみようと思います。

 こども家庭庁では現在、こども施策の基本方針となる「こども大綱」策定に向けて専門家の議論が行われています。
 キーワードは「こどもまんなか社会(=全てのこども・若者が身体的・精神的・社会的に幸福な生活を送ることができる社会)」です。

 先日、こども大綱を審議している審議会から中間整理案が公表されました。

 この中では、「こども・若者を権利の主体として認識し、その多様な人格・個性を尊重し、権利を保障し、こども・若者の今とこれからの最善の利益を図る」「こどもや若者、子育て当事者のライフステージに応じて切れ目なく対応していく」「良好な生育環境を確保し、格差や貧困の解消を図り、全てのこども・若者が幸せな状態で成長できるようにする」「若い世代の生活の基盤の安定を図るとともに、多様な価値観・考え方を大前提として若い世代の視点に立って結婚、子育てに関する希望の形成と実現を阻む隘路の打破に取り組む」など、六つの基本方針が示されています。

 つまり、子供が健やかに成長できるよう生育環境を保障し、格差や貧困、あるいは虐待の問題などがあればそれを改善する。そして成人になれば生活基盤が安定するよう支援し、多様な価値観を尊重しながら、結婚や家族形成、子育ての希望を持っている人にはそれがかなえられるようにするということです。

 成長に何らかの困難がある子供たちへの支援や、若い世代の人生の希望がかなうよう支援する取り組み自体は確かに重要なものです。
 一方で、子供への支援、あるいは子育てで困難を抱える保護者への支援はありますが、それがどうしても「困っている個人」に目が向けられる傾向が強いように感じられます。家庭全体を支えようという考えは弱いわけです。

 しかし、子供が生まれて成長していく過程で最も重要な場となるのは、言うまでもなく“家庭”です。
 社会の最小単位としての家庭には、親子関係、夫婦関係といった関係性があり、その中で子供も育ち、親も育ちます。例えば児童虐待や家庭内暴力などに対応する際も、家庭自体がどのような状況にあるかを見ることが重要であるはずです。

 そう考えると、大綱は「こども大綱」というより、家庭の施策の基本方針を含む「こども家庭大綱」の視点を持って策定すべきではないかと思います。