青少年事情と教育を考える 241
「こども誰でも通園制度」の課題

ナビゲーター:中田 孝誠

 政府は少子化対策の推進に向けて、6月に「こども未来戦略方針」を打ち出しました。
 この中で、注目されている施策の一つが「こども誰でも通園制度」です。
 これは、親が働いているかどうかにかかわらず、保育園を週1、2回など時間単位で利用できるというものです。

 「全てのこどもの育ちを応援し、こどもの良質な成育環境を整備するとともに、全ての子育て家庭に対して、多様な働き方やライフスタイルにかかわらない形での支援を強化するため」(こども家庭庁ホームページ)に新たに創設されます。
 全国ではすでにモデル事業が始まっていて、今後本格的な実施に向けて議論が進められます。

 モデル事業では、孤独な育児に悩んでいた保護者からは、精神的な余裕が生まれたり、子供の発達にも良いといった声があります。
 一方、保育の現場からは制度に対する不安の声が上がっています。

 例えば、保育士不足が改善されないまま、新たな負担が増えるのではないかというものです。
 また、毎日通う子供と週1、2回の子供では、おのおのの特性に合わせた保育をどうするかということも簡単ではありません。受け入れ人数に余裕がある地域とそうでない地域でも全く違ってきます。

 こども家庭庁の部会では、「こども誰でも通園制度」に関して、委員から次のような声が上がっています。
 「多様な支援があることが大事だが、…こどもが育つこと、親が育つこと、こどもに関わる人たちが共に育つ、協働的な学びということをどのように位置づけていくかが大事」「こどもをどうするかという発想だけではなく、親育てという時空間として、地域の子育てハブ機能というものを強化していくぐらいの覚悟を持って少子化対策に当たっていかなければならない」(こども家庭庁「幼児期までのこどもの育ち部会」第3回会合 6月26日より)。

 つまり、単に親が子供を預ける機会を増やすというだけではなく、親同士が子育てを学び、親自身が育つことができる保育園にすることが大切だということです。保育園の在り方の大きな転換を迫っているわけです。
 こども家庭庁の検討会では、制度の本格実施に向けた中間取りまとめを12月に発表する予定です。