2023.09.25 17:00
コラム・週刊Blessed Life 282
ゼレンスキー大統領の国連演説に思う
新海 一朗
米国ニューヨーク時間の9月19日午後、ウクライナのゼレンスキー大統領は国連総会で初の対面演説を行いました。
「ロシアが世界を最終戦争へと追い込む中、ロシアの侵略に続いて、他の国をあえて攻撃しようなどとする者が決して現れないよう、ウクライナは全力を尽くしている」と、ゼレンスキー氏は国連総会で世界各国の指導者たちに語りました。
さらに「兵器化を抑制し、戦争犯罪を罰し、国外に連行された人々を帰国させなければならない。占領者は自分たちの土地に戻らなければならない」と訴えました。
ゼレンスキー大統領は、自身が示してきた和平案「平和の公式(平和フォーミュラ)」について、これはウクライナのためだけでなく、世界の他の国々のためのものでもあると述べ、彼の和平案をよくよく考えてほしいと示唆しました。
ゼレンスキー大統領の「平和の公式」というのは、2022年11月15日、G20首脳会議の際に公表したものです。
それは、「ウクライナによる戦争終結・平和の保証の10条件『平和の公式』」です。
①放射能・核の安全、②食糧安全保障、③エネルギー安全保障、④全ての被拘束者と追放された人々の解放、⑤国連憲章の履行とウクライナの領土一体性と世界の秩序の回復、⑥ロシア軍の撤退と戦闘の停止、⑦正義の回復、⑧環境破壊行為(エコサイド)対策、⑨エスカレーションの防止、⑩戦争終結の確認、の10項目です。
もちろん、これはロシアから見れば、受け入れられるものではありません。
ロシア側は、2022年10月に東部・南部4州とクリミアがロシアに「併合」されたという「領土上の新たな現実」をウクライナが認めることが、ロシアがウクライナとの交渉に応じる大前提であるという立場を崩していないからです。
お互いの主張は大きく食い違っており、和平交渉どころの話ではありません。このまま、結末を付けられない戦争が続いていくならば、ロシアが勝つためには核も致し方ないというところまで行って、核戦争の脅威が現実のものとなってしまいます。
根本的な重要性、人間としての重要なことは何かと言えば、恨み、憎しみ、不満は、結局、他者を破壊し、自己を破壊するということ、また、他国破壊、自国破壊を行う愚劣な行為に走ってしまうということです。
では、どうすればいいのか。
破壊はマイナス作用です。誰もが納得できるプラスの創造エネルギーを中心として、自他を生かす道を選択する以外にはないということです。
利己主義とそれによって生じる相互否定の闘争的な社会と文化は、愛を知らず、平和を知らず、感謝を知らない社会となります。
そのような社会の総和が国家となるとき、他国を破壊し、自国までも破壊する結果になるのです。闘争の究極は戦争であり、殺戮(さつりく)です。
私たちは、喜びが生じ、愛があふれ、平和の風に吹かれ、共に感謝する世界を願っています。
利己主義と退廃的な文化を終焉(しゅうえん)させ、新しい心情文化革命を起こさなければなりません。
もし戦争を終わらせる答えを言えと言われれば、「利他的な愛」がその答えです。それしかありません。
観念的に聞こえるかもしれませんが、人類が利他的な愛にたどり着くまで、戦争の悲劇は決して終わらないということを肝に銘じなければなりません。