2018.08.14 12:00
世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~
イランへの制裁再開と北朝鮮
渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)
8月6日から12日までを振り返ります。
この間、以下のような出来事がありました。
米政権がイラン核合意からの離脱に伴い対イラン制裁の一部を再発動(7日)。沖縄県の翁長雄志知事がすい臓がんのため死去(8日)。石破茂氏、自民党総裁選出馬表明(9日)。米ペンス副大統領、2020年までに「宇宙軍」創設を発表(9日)、などです。
今回は、米国による対イラン制裁の再発動を取り上げます。
米国は8月7日、イランに対する経済制裁の一部を復活させました。復活という意味は、かつての制裁を今再び開始したということです。
経緯は以下のごとくです。
2002年にイランの反体制派が核兵器開発の疑惑を公表しました。そして06年4月、イランは低濃縮ウランの製造成功を発表したのです。国連の制裁決議(同年12月23日)はこのようなイランの行動に対してなされたものです。
その後長期にわたる交渉が行われ、ついに15年7月14日、米英仏独中露(6カ国)とイランが、核問題に関する最終合意を成立させます。そして翌年1月から欧米によるイランへの制裁が解除されたのです。
しかし米・共和党の一部やイスラエルは、合意が全く不十分であるとして強く非難し続けていました。
その理由は主に、以下2点です。
① 合意では、核開発は15年間制限されているが、その後に開発する可能性がある。
② 弾道ミサイル開発の制限が合意に含まれていない。
トランプ政権は当初、イラン核合意にとどまりながら、イランにさらに厳しい制限を課すことを考えていました。つまり「再交渉」を行おうとしたのです。しかしイランは応じようとしませんでした。
結局トランプ氏は今年の5月8日、核合意から離脱を表明したのです。それに伴って制裁の全てを再開するとも明言しました。しかし制裁対象によって再開時期を2回に分けており、8月7日は第一次なのです。さらに大きな影響を与え得る制裁再開=第二次は11月5日です。
第一次はイランの自動車産業、貴金属の売買、イラン政府による米ドル購入などに関する制裁再発動ですが、第二次はイラン産原油の禁輸などとなります。日本も含む第三国企業もイランと商取引すれば制裁対象になるのです。
米国が今、特定の国の核廃棄に向けて取り組んでいるのはイランと北朝鮮です。緊急性は北朝鮮にありますが、イランへの対応は北朝鮮への重要なメッセージになると見ています。
トランプ氏は4月30日の記者会見で、イラン核合意について「米国が離脱すれば北朝鮮への正しいメッセージになる」と述べました。イランと北朝鮮の核開発での緊密な関係も指摘されており、両国への妥協はないようです。