2023.08.28 12:00
心をのばす子育て 1
アプリで読む光言社書籍シリーズとして「心をのばす子育て」を毎週土曜日配信(予定)でお届けします。
子育ての本質を理解し、個性に合わせた教育で幸せな家庭を築くための教材としてぜひお読みください。
長瀬雅・著
プロローグ
■青少年犯罪の変容
最近の『警察白書』によると、現在、日本の青少年犯罪における補導人員の数は戦後4回目の山を迎えています。1回目の山は1951年ごろ、続いて64年ごろ、83年ごろと続き、現在が4回目の山です。この4回目が今までの3回と違うのは、犯罪が凶悪化していることと犯罪の動機がよく分からないという点にあります。ある子供は、「人を殺す経験をしてみたかった」と言って人を殺しました。今まで普通に生活していた子供が、ある日突然犯罪を起こすのです。警察では「いきなり型非行」と呼んでいます。しかし、実際には突然ということはあり得ません。犯罪に至るまでの変化や問題が見えていないので、いきなりと感じるだけなのです。
昔の青少年犯罪は、貧しさのゆえだったり、大人社会への反発だったり、遊びであったり、ある程度、動機が理解できる側面がありました。変な言い方かもしれませんが、動機が理解できた分、安心できたのです。ところが最近の青少年問題はなぜそうするのか理解できないので、みんな不安を抱いてしまうのです。原因が分からなければ解決のための対策が立たず、対処できないからです。
最近の青少年問題は犯罪だけではありません。いじめ、不登校、援助交際、一流の大学を卒業して入社したのに人とのつきあいが苦手で会社を辞めて引きこもりになってしまう、女性にストーカー行為をして殺人まで犯してしまう、成人式に騒ぎ回るなど、本当にどこかおかしくなっています。
ところが、おかしいのは子供だけではありません。親のほうもおかしいのです。子供に対する親の虐待がここ数年で急増しています。最近の青少年問題は、親がおかしくなっているのが原因で、子供にその結果が出ていると考えるべきでしょう。
日本の子供は小学生ぐらいまでは世界的に比較しても見劣りしません。しかし中学生ごろからおかしくなり始めます。ですから、日本の親は幼児期だけでなく、中学生以上の子供をもどう育てるのかを考えなければなりません。
近年どうして子育てがこんなに難しくなってきたのでしょう。3世代同居で住んでいると、よく子供の教育のことで対立することがあります。お姑(しゅうとめ)さんは「子供なんてほっといても育つんだ」と言います。だから、若い夫婦が子供に対して悩みがあるといっても、お姑さんには理解できないことが多いのです。そうかと思えば、年配の方は現代の子供を見て、よく眉(まゆ)をしかめます。それに対して若い人は「時代が違う」と言いますが、それだけでは通じません。具体的に時代の何が違い、それが子育てにどんな影響を与えるかということを理解して話し合わないと、世代間の意見の一致を見るのは難しいでしょう。具体的にはいったい何が違うのかを見ていきましょう。
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次回は、「物質が豊かで便利な時代/平均寿命と子供の数の変化」をお届けします。