2023.08.19 05:00
シリーズ中級講座 19
伝道学<5>
世界家庭誌で2021年11月号から2022年12月号までの期間に掲載された「中級講座シリーズ」の内容を、「シリーズ中級講座」のタイトルで毎日朝5時にお届けすることになりました。信仰生活の向上、毎日のみ言学習にお役立てください。
伝道教育局副局長
入山 聖基
(7)伝道の精神
続いて、真の父母様の生涯路程から伝道の精神を学んでみましょう。
①興南(フンナム)収容所で伝道
真のお父様は、キリスト教指導者と北の共産党の迫害によって、興南収容所に2年8か月にわたり収監されました。“飢餓地獄”“疲労地獄”と言われた苛酷な環境に加え、共産党の監視下で、み言を一切語ることができない状況の中、12人以上の弟子を伝道されました。正に獄中伝道です。
真のお父様は、どのようにして伝道されたのでしょうか? お父様は、かます(わらでできた袋)に硫酸アンモニウムをスコップで入れる仕事を率先して行われました。それは、皮膚がただれる危険なものでしたが、仕事の速度によってチームの作業の成否が決まる重要な役割でした。囚人たちを苦しめ、死に至らしめるための労働であるにもかかわらず、お父様は、まるで神様から与えられた仕事のように感謝して取り組まれました。
真のお父様は、囚人たちが使う便器の隣で休まれました。誰もが嫌がる環境を自ら選ばれたのです。そのような姿を目にして、多くの囚人は感動し、感化されました。お父様は環境を完全に主管しておられたのです。
それは、内的な強さがなければできないことです。人が失敗するときは、まず“難しい”という思いに支配されて内面が崩されます。真のお父様は、感謝をする強靱(きょうじん)な力と、“どんな環境でも伝道できる”という強い信念によって環境を消化し、伝道環境を創造されたのです。
興南収容所では、苛酷な労働にもかかわらず、ろくに食事が与えられないため、囚人たちは皆、飢えていました。“豆一粒が牛一頭の価値を持つ”と言われ、誰もが、自分が生き延びることに精いっぱいでした。亡くなった囚人の口の中から飯粒をかきだす者が現れるほど、他人のことなど、みじんも思いやることのできない環境だったのです。そんな中で、真のお父様はある期間、自らの食事を半分にして隣の囚人に分け与えられました。生命以上に食べ物が重要に思える環境において、それは正に犠牲の愛でした。
ご自身のお母様(忠母〈チュンモ〉様)からの貴い差し入れも、食べたり着たりせずに囚人たちに分け与えられました。そのようなことは、自らが死ぬ境地に立っても他人を思いやれる心がなければできません。
真のお父様は、地上でいちばん愛から遠いように思える、地獄を象徴するような収容所において、真の愛を実践されました。そのとき、地獄の中でも愛を信じる人たちが現れたのです。“伝道とは、愛を信じられない人たちに、愛を信じさせてあげること”とも言えます。
また、真のお父様は誰よりも早く起きて、祈祷する時間を持たれました。神様に、「私は大丈夫ですから、心配なさらないでください」と祈られたのです。飢餓地獄の中で神様を慰労し、人類の解放のために祈られました。そして、「おまえのために海を残しておいた」という人類の飢餓問題救済の答えを与えられたのです。
伝道は、救いの業です。救いに対する熱い思いがなければできません。真のお父様は、囚人のために祈られました。彼らの誕生日や家族のことまで祈られたのです。ここに、“名前を挙げて祈る”という伝道の原点を見ることができます。
このような内的な勝利が、外的な勝利の道を開きました。霊界が動員されて、囚人の夢に先祖が現れてお告げをするなどの現象が起き、真のお父様に命懸けでついてくる12人が伝道されたのです。
②ポムネッコルでの伝道
興南収容所から解放され、こじき同然の姿で釜山(プサン)に避難された真のお父様は、二畳ほどしかない段ボール小屋で再出発されました。お父様は、木の箱を机にして「原理原本」を執筆し、小さな小屋に住みながらも、とてつもなく大きな人類救済の真理と摂理を構想されたのです。「原理」が文字で表されたことにより、人々に圧倒的に真理を伝えやすくなりました。
私たちも「原理」を学び、真の父母様の真理伝達に対する思いを相続することによって、自己伝道できます。
「原理原本」の執筆後、真のお父様は、導かれてきた人たちに「原理」を伝えていかれました。「一人に対して、千人に語るように語られた」と言われます。単なる言葉や知識の伝達ではなく、生命を生かす道を開くためでした。
私たちも、原理講義をするときには、「原理」のみ言が持つ、生命を生かす力を感じながら、言葉に乗せて伝えましょう。そうすれば、言葉だけではなく、生命を与えられます。たとえ言葉を全部忘れても、生命は残るようになるのです。
真のお父様は、近くの「涙石」で涙の祈祷を捧げられました。「六千年も苦労される神様、あなたのみ旨を私が成し遂げて、必ず安息させてさしあげます。私がきっとこの地上に神様の国と世界を取り戻してさしあげます」と痛哭しながら祈られたのです。そして、これから導かれてくる、まだ見ぬ人たちのことを祈りながら、慕わしい心情を復帰していかれたのです。
「朝、山に登れば夕方まで、昼食を忘れて待つのです。神様が六千年間、失ってしまった堕落した人間を待つ、その心情的体恤(たいじゅつ)が必要なのです。夕暮れになれば『来ないか』、朝になれば、鶏が鳴く前に『来ないか』と、寝ても覚めても忘れられない心情にならなければならないのです。
今日、皆さんが『先生が恋しい』というのは、そのような動機の起源が天上世界に基盤として残っているからです。皆さんは知りませんが、この三千里半島(韓半島)に、この運気の中にそうした基盤が残っているためです。そして、その運気圏内で生きている人は、先生に会いたがり、先生のことが我知らず思い起こされるのです。思うまいとしても、ふと思い出されるのは、すべてそのような動機の起源を蒔(ま)いておいたためなのです」(『真の御父母様の生涯路程②』229〜230ページ)
このように、伝道する対象を先に慕い愛する心を復帰することが、実体の伝道につながるのです。
③ダンベリー刑務所での伝道
米国を救うために全身全霊を捧げられた真の父母様でしたが、米国の国家的迫害を受け、1984年7月20日、真のお父様が、ダンベリー刑務所に収監されてしまいました。しかし、そこでも獄中伝道をされたのです。
真のお父様は、早朝から祈祷し、み言を訓読されました。五色人種を象徴する五つの石を置き、神のため、世界のため、食口のため、そして収監されている囚人とその家族の名前を挙げながら祈られたのです。囚人やその家族の誕生日には、真のお母様と連携して、プレゼントをあげるなど、彼らのサポートをされました。それで、刑務所の中に感動が広がったのです。
また、雑巾洗いや、囚人たちの不平不満が出ないように完璧に食事を分配する仕事などを率先して行われました。すると、冷ややかに見ていた囚人たちの目や態度は急速に変わり、真の父母様を慕う者たちが出てきたのです。刑務所の中には、一生離れたくないと思う深い心情関係が築かれていきました。
真のお父様は、絶望ではなく、未来への希望を抱いて生活されました。夜、ロッカーについている電球の明かりで英語、スペイン語を勉強し、次の摂理の準備をされました。そして、既成キリスト教会の聖職者たちに『原理講論』と講義ビデオを送って教育されたのです。
④真のお母様の伝道
80歳を迎えようとされている真のお母様も、今もなお、伝道しておられます。
「アフリカに向けて出発し、その地で多くの義なる人々に会いました。そこで天の摂理を語り、私が独り娘であると明らかにしました。そのとき彼らは私を歓迎したのです。特に多くの宗教団体の指導者たちが歓迎しました。その中でハデベ預言者に30分間、天の摂理に対しての教育をしました。そして彼は独り娘・真の母を受け入れ、真の母の息子になったのです」(本誌2021年6月号、12ページ)
「バローゾ(鮮鶴〈ソンハㇰ〉平和賞委員会委員長、元EU欧州委員会委員長、元ポルトガル首相)が私に対して質問するとき、真実を話してあげました。それでこの人が変わり始めたのです。どうしてそのような勇気が皆さんにないのでしょうか?」(本誌2022年5月号、7ページ)
真のお母様は、宗教団体のリーダーや国家指導者たちに対して、直接、「原理」を語り、天の父母様の摂理を伝え、親子の縁を結びながら伝道しておられます。
このように、真の父母様の生涯路程こそが、“伝道の最高の教科書”です。真のお母様は、今も、天上の真のお父様と共に全人類の伝道に邁進していらっしゃいます。そして、私たちがそうしたみ旨の相続者になることを願っておられるのです。皆さんもその一員に加わり、これから「伝道者」として歩んでいきましょう。