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世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

外相・秦剛氏突然の解任、深まる中国不信

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は、724日から30日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。

 中国が北朝鮮に代表団、26日訪問を発表(24日)。中国が外相を解任、後任に王毅氏(25日)。露国防相が訪朝へ、対米共闘強調(25日)。フン・セン首相が辞任を表明(26日)。北「戦勝記念日」で軍事パレード(27日)。イタリア、「一帯一路」離脱を米と協議(27日)、などです。

 中国の外相・秦剛氏(57歳)が解任されました。全人代(全国人民代表大会)常務委員会が725日に発表しました。
 後任には外交担当トップの王毅共産党政治局員(69歳)を充てることを決定したと、国営新華社通信が伝えました。
 いずれにせよ、一国の外相が対外的に何の説明もなく解任されたと発表されたのです。異例を超えて異常です。

 秦氏は、625日に北京でロシア外務次官、スリランカ外相、ベトナム外相とそれぞれ会談したとの発表を最後に、動静が不明となりました。
 そんな中で外務省は711日、記者会見で、「身体的理由」によりインドネシアでの東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会合に出席できなくなったと説明しました。

 東南アジア諸国連合関連会合には中国外交トップの王毅共産党政治局員が出席し、さらに18日には北京で米国のケリー大統領特使と会談するなど、秦氏の代理役を務め続けていることは確認できました。

 外務省のホームページは、秦氏に関連する記事を削除しました。解任理由はいまだ不明です。一国の外相が解任されてもその理由を説明できない国として、中国への不信感が膨らむことは避けられません。

 原因について、香港紙・星島日報は秦氏は新型コロナに感染して休養していると伝え、台湾メディアは秦氏が香港フェニックステレビの女性ジャーナリストとの関係を巡り、中国共産党で汚職摘発を担う中央規律検査委員会の調査を受けているとの情報を伝えました。しかしいまだ、中国政府の正式発表はありません。

 秦氏は習近平主席が期待していた人物でした。2012年秋に習近平氏は総書記に就任しましたが、秦氏を気に入ったのでしょう、秦氏を2014年に外務省の儀典局長に就けます。
 儀典局長は、習氏が外国の首脳と会う際の舞台回しをする重要な役どころです。さらに2018年には外務次官、駐米大使を経て2022年末に外相に就任しました。57歳です。

 既述のように、秦氏は習近平国家主席が起用した人物です。このたびの解任で習氏の権威に傷がつくことは避けられません。
 さらに、知米派が不在となり、米国との関係改善に影を落とすことになります。今後、対米関係の立案で強硬論が優先されることも想定されます。

 この件で、中国政府は秦氏の動静に関して回答を避け続けています。政権の不透明な体質が明らかになり、中国外交の不透明さが増しているとの見解も出ています。



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