2023.06.17 17:00
43とも倶楽部誕生物語 38
自発的に流す涙こそが命綱
櫻井 晴信
今話題のユニークな読書会、「43とも倶楽部」。本シリーズでは、「43とも倶楽部」がどのようにしてつくられてきたのか、その誕生の物語をお届けします。
今回は、前回取り上げたギャンブル症者の唯一の生還の方法である、自助グループ「ギャンブラーズ・アノニマス(GA)」についてお話しします。
「アノニマス」とは匿名という意味です。アルコール依存症の人が通う「断酒会」と同じです。
匿名ですから、名前を明かさずあだ名で通します。住所も職業も言う必要はありません。上下関係はなく、全員が平等です。世話人的な人はいますが、司会はそれぞれ順番で決めます。
この会の特徴は言いっ放し、聞きっ放しで、まとめも結論も説教もありません。
順番に発言するのですが、発言したくなければパスしても非難されず拍手されます。
発言は自分のことしか話しません。勇気を持って自分のギャンブル歴や家族に迷惑をかけたこと、会社の金を使い込んだことなどを話すと、とても大きな拍手をもらえるのです。
参加者全員ギャンブル症者ですから、話はほとんど自分が思い当たることばかりで共感できます。全員が関心をもって真剣に聞いてくれるのが分かります。
そして、何度か参加するうちに、自分もやめられるかもしれないという光明が差してきて、涙を流して苦しかった心情を吐露し始めます。
誰から強要されるわけではなく、自発的に流す涙こそが、天上から垂れた蜘蛛(クモ)の糸、命綱となるのです。
(続く)