2023.06.11 22:00
ダーウィニズムを超えて 10
アプリで読む光言社書籍シリーズとして「ダーウィニズムを超えて」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
生物学にとどまらず、社会問題、政治問題などさまざまな分野に大きな影響を与えてきた進化論。現代の自然科学も、神の創造や目的論を排除することによって混迷を深めています。
そんな科学時代に新しい神観を提示し、科学の統一を目指します。
統一思想研究院 小山田秀生・監修/大谷明史・著
第一章 進化論を超えて
―新創造論の提唱―
(四)熱力学の第二法則から見て
熱力学の第二法則(エントロピー増大の法則)によれば、すべてのものは、自然のままにしておけば、エントロピーを増大させる方向、すなわち無秩序を深める方向、不規則さを増す方向、崩壊へと向かう。例えば、誰も住まないで放置された家は壊れていくのであり、生命を失った人間や動物の死体は、崩れてやがて土に還るのである。
ところが、生物の進化はその逆の方向である。すなわち、生物は秩序、複雑さを増す方向へと発展してきたのである。したがって、進化は熱力学の第二法則に反しているように見える。
◯進化論
進化論者は、閉じた系においてエントロピーの増大の法則は成り立つのであり、地球のような開放系ではエントロピーは減少しうると主張する。すなわち、太陽がエントロピーを増大させながら、莫大な量のエネルギーを放出しており、その一部が地球に吸収され、地球のエントロピーを減少させながら、地球上の生命をはぐくんでいるのであって、太陽系全体ではエントロピーは増大しているのだと言う。
この問題に関して、今日、最も影響力のある進化論者のリチャード・ドーキンス(Richard Dawkins)は、進化論は熱力学の第二法則に反するという主張は“素人の反進化論者”がしばしばもち出す主張であると揶揄(やゆ)して、一蹴しようとする(*23)。
◯創造論
生物は、自然界のランダムな力の作用によってではなく、神の言によって創造されたものであるから、創造はエントロピーが減少する方向であると見る。
◯新創造論
英国の科学評論家のフランシス・ヒッチング(Francis Hiching)が指摘しているように、太陽エネルギーが地球のエントロピーを減少させたという進化論者の主張は不十分である。ヒッチングは言う。「[地球上の]進化の進行は太陽エネルギーによってどのように支えられたのか、いかにして無秩序から秩序がもたらされたのか、といった疑問は未解決のままなのである。……太陽の光や熱は、生物の上にも、無生物……の上にも等しく降り注いでいる。……太陽が廃車置き場を100万年間照らしても、さびて壊れた部品がうまく組み合わさって、再び動く車ができるわけではない(*24)」。
家を自然のままに放置すれば、次第に壊れていく。しかし大工のような人がいて、絶えず修理、改築、建て替えをしていけば、家は保存され、さらにはより発展したものになっていく。それと同じように、生物も自然のランダムな力(宇宙線、紫外線、雷、海底火山など)の作用にさらされれば、DNAの中の遺伝子に乱れが生じ、生物は劣化していくだけである。しかし遺伝子を修復したり、組み換えたり、新たな遺伝子を注入する遺伝子エンジニアのような存在が、その背後に働いているとすれば、生物はそれぞれ同一性を維持しながら、その中から新しい種の生物が生まれることも可能である。すなわち自然界の物理的な力の背後に、創造的な力(第三の力、宇宙的な力)が働いていれば、秩序は増大し、より複雑で高次のものへと生物は発展できるのである。
天文学者、哲学者として、世界各地で教鞭を執ったアーナ・A・ウィラー(Arne A. Wyller)は、進化の設計図を描き、DNAを操作する、地球に宿る巨大な知性である「惑星意識」の存在を提唱している。さらに米国エール大学医学部解剖学教授であったハロルド・サクストン・バー(Harold Saxton Burr, 1889-1973)は、宇宙のかなたから不可視の電気力場、ライフ・フィールドが及んでいて、全地球をおおい、生命をもつものはみな、その中にある設計図のもとに生まれ、形づくられていくと言う。ウィラーやバーの、このような見解は統一思想の創造論を裏づけるものである。
*23 リチャード・ドーキンス、垂水雄二訳『悪魔に仕える牧師』早川書房、2004年、151頁。
*24 フランシス・ヒッチング、樋口広芳・渡辺政隆訳『キリンの首』平凡社、1983年、231頁。
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次回は、「相似性は進化の証拠か、創造の証拠か」をお届けします。