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愛の知恵袋 175
子供には伝記をたくさん読ませたい

(APTF『真の家庭』296号[20236月]より)

松本 雄司(家庭問題トータルカウンセラー)

思春期はいつも心が揺れている

 中学生、高校生、大学生など、自我に目覚めた我が子の扱いは難しいものです。

 思春期の子供たちの心理を最も的確に表しているのは「自分探しの旅人である」という言葉です。

 幼少期と小学生のうちは、毎日、その日その日を楽しみに暮らしていけますが、思春期に入ると、「自分もずっと子供でいられるわけではないんだ。大人の社会に出なければならないんだ」ということが分かってきます。

 「大人の世界はすごく厳しそうだが、自分はやっていけるのか」「自分は将来、何をすればいいのか?」「どんな職業についたらいいんだろう?」…という不安と迷いが心の中を駆け巡ります。

 親から見ると、「勉強しない」「ダラダラしている」「すぐ反発する」「口を利かない」「引きこもる」「何を考えているのかわからない」…等々、つい叱りつけたくなるような態度が見られます。

 しかし、子供からすれば、答えの見えない自分自身にイライラしている時に親から叱責されたり、あれこれ要求されると、ついカッとなってしまいます。その結果、口を閉ざして引きこもったり、逆に、暴言を吐いて非行に走ったりしてしまいます。

夢が出来れば目が輝き、前に向かって動き出す

 今まで多くの親御さんから相談を受けましたが、反抗し非行に走る子、無口になって引きこもる子、そして、無関心でただブラブラしている子などがいました。

 私も初めの頃はヤンキー化にはどう対処したらよいのか、引きこもりにはどう対応すればよいかと、別々の課題として対策を考えていましたが、ある時に、大きな発見をしました。一見正反対に見えるこれらの行動ですが、実は、全てのケースに共通する原因があることに気が付いたのです。

 つまり、反発し非行に走る子にも、無口で引きこもる子にも、共通しているのは「夢を持っていない」ということなのです。その点では根は一つだと言えます。

 そこで、子供たちには「夢を持たせてあげること」こそが最大の解決策だと確信するようになりました。

 実際、ある子は今まで勉強にも身が入らず、「何もやる気がしない」と言っていたのに、「公認会計士になりたい」という自分の夢を見つけると、まるで人が変わったように自分から進んで机に向かうようになりました。

 また、不登校・万引き・喧嘩など、さんざん問題を起こして親を泣かせていた子が、突然「専門学校に行く!」と言って本を読み始めたのです。親が恐る恐る聞いてみると「調理師になって和食の有名店をつくる」という夢を見つけたのです。

 そうです! 子供たちは、ひとたび「この道に行きたい!」という夢、「こういう人になりたい!」という目標ができると、それを達成するにはどういう学校に行って、どういう資格を取ればよいかなどを調べ始めます。そして、そこに向かって自分の意志で走り出します。

多くの人物伝に触れさせてあげよう

 思春期の子供たちは、自分が何をしたらよいのかわからない時は苦しんでいます。自分の本心が納得できる目標が見つかれば、前を向いて自分自身で進んでいきます。そうなれば、親はそれを理解し応援してあげるだけでよいのです。

 何より大事なのは、子供が心から「やりたい!」と思う夢・目標を見つけさせてあげる事なのです。

 そのために、是非やってほしいことがあります。それは、幼少の時から多くの人物の人生路程を知る機会を与えることです。日本と世界の各界の著名人の人物伝や業績などを知る機会をつくってあげてほしいのです。

 例えば、書物で聖人・義人の伝記を読む。テレビやDVDで偉人達の物語を見る。著名人のゆかりの地を訪ねる。博物館で先人たちの偉業を知る。美術館で有名作家の作品に接する。また、芸術公演やスポーツ観戦で著名な音楽家や選手達の妙技に触れるというのも良い刺激になります。

 そして、子供が関心を持った職業があれば、その分野に詳しい人に引き合わせて話を聞くと良いし、今はインターネットでもあらゆる情報が得られます。

 それらは全て子供の心に残り、試行錯誤の「自分探しの旅」の道標になります。

 そして、ある瞬間に心の中でひらめきが起こり、「これだ!」「自分はこんな生き方をしたい!」「こういう仕事で貢献したい!」という雄叫びとなって自分を突き動かしてくれるのです。

 大人もこの点では全く同じです。夢も目標もない時は、ただ「時の流れに身をまかせ」で、漫然とした毎日を過ごしていますが、明確な目標ができると、その瞬間から目が輝き、熱意をもって取り組んでいくことができます。

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